米、貿易戦争で連続利下げ 市場・政権が包囲網

貿易摩擦
2019/9/19 3:06
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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)が18日、7月の会合に次ぐ連続利下げに踏み切り、政策金利を再び1%台に引き下げた。貿易戦争による景気減速に先手を打つ「予防的利下げ」との位置づけだ。ただ、金融市場とトランプ米大統領の強烈な緩和圧力が効いた面は否めず、中央銀行の主導権は徐々に弱まっている。

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追加利下げの最大の理由は、中国との貿易戦争で企業心理が弱含んできたことだ。4~6月期には設備投資が3年ぶりに前期比マイナスに転落。7月末に10年半ぶりの利下げを決断したが、製造業の景況感指数は8月も下落して、好不況の境目である50を下回った。景気不安は止まらず、連続利下げが求められた。

堅調だった雇用も徐々に伸びが鈍ってきた。2019年の就業者数の伸びは月平均15万8千人にとどまり、18年の同22万3千人から大きく減速した。とりわけ製造業は19年の伸びが同6千人と、18年の同2万2千人から急ブレーキがかかっている。FRB高官からは「消費に弱さが表れるまで利下げを待つのは遅すぎる」(ダラス連銀のカプラン総裁)と追加緩和論が強まっていた。

もっとも、米景気は拡大局面が戦後最長の11年目に突入したばかりで、株価も最高値をうかがう勢いだ。そのため、18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、カンザスシティー連銀のジョージ総裁とボストン連銀のローゼングレン総裁が利下げに反対。両氏は7月末の会合に続いて反対票を投じており、失業率の低下や物価上昇率の高まりなどを理由に「米景気は堅調で利下げは必要ない」と主張していた。

市場は7月末の会合直後から9月の利下げを完全に織り込み、FRBは政策判断の余地を失っていた。18年末の利上げ直後に株価が急落すると、パウエル議長は早々に利上げの休止を表明。市場はFRBが政策判断で資産価格に強く配慮すると受け止めた。催促相場は止まらなくなり、FRBは市場の緩和観測を追いかけるように利下げを繰り返し始めている。

トランプ米大統領の要求も一段と強まっている。中国との貿易交渉は膠着したままで、景気不安を和らげるため「FRBは金利をゼロかそれ以下に下げるべきだ」と、極端な金融緩和を主張。20年の大統領選を前に、パウエル氏への圧力は止まる気配がない。

政策金利は再び1%台に低下し、FRBの政策余地はますます乏しくなっている。にもかかわらず、貿易戦争に端を発した企業心理の悪化は、金融緩和だけでは止められない。米景気は好不況の分水嶺にあるが、経済政策はちぐはぐさを一段と強めている。

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