米、イラン制裁強化へ 混迷深まる中東情勢

トランプ政権
中東・アフリカ
2019/9/18 21:44
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【ワシントン=中村亮、リヤド=岐部秀光】米国とイランの間で緊張が高まっている。トランプ米大統領は18日、イランへの大幅な制裁強化を指示したと表明した。サウジアラビアの石油施設への攻撃を巡り、米政府はイランが関与した疑いを強める。イラン国内では強硬派が勢いを増し、米イランの対話機運が後退した。トランプ氏は軍事攻撃に慎重な構えをみせるが、中東情勢の不透明感が強まっている。

米国はサウジ石油施設への攻撃がイランによって実行されたとの見方を強めている(米政府、DigitalGlobe提供・AP)

トランプ氏はツイッターでムニューシン米財務長官にイラン制裁の大幅な強化を命じたと明らかにした。すでに原油の全面禁輸などに踏み切っており、追加制裁でイランをさらに追い込む方針とみられる。

ポンペオ米国務長官は18日、サウジ西部ジッダでサウジの実力者ムハンマド皇太子と会談。攻撃を受けた国営石油会社サウジアラムコの報告や米軍の分析をもとに実行犯の特定を進め、今後の方針を協議する。

サウジは攻撃の実行犯について国連に調査を要請した。イランの直接的な関与が確認されれば、強硬派のムハンマド皇太子がイラン敵視に傾くのは確実だ。サウジは18日、米国が主導するホルムズ海峡の安全確保を目的とした有志連合に参加するとも表明した。

米メディアによると、米政府はイラン南西部から巡航ミサイルと無人機で攻撃が実行されたとの見方を強める。イラン国営メディアによると、イランのロウハニ大統領は18日、米国がイランの関与が濃厚とみていることに「そんな主張はだれも信じない」と改めて否定した。

米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は「米軍は軍事面での検討を進めている」と話す。ただ2020年の米大統領選の再選をめざすトランプ氏は軍事オプションには慎重だ。

サウジ攻撃は米国とイラン間の融和ムードに水を差した。17日に開幕した国連総会でトランプ氏とロウハニ師が会談するとの観測も一時浮上したが、イランの最高指導者ハメネイ師は17日「イランはいかなるレベルでも米国と対話しない」と対決姿勢を鮮明にした。イランでは国際協調を重視するロウハニ師やザリフ外相ら穏健派の立場が弱まり、保守強硬派の勢いが増す。

イランは2018年に核合意を離脱した米国に対抗し、核合意の義務停止の範囲を広げている。9月は高性能の遠心分離機を一部稼働させる抑制的な対応だったが、11月にもウラン濃縮レベルを兵器級に近づく20%まで引き上げるおそれがある。そうすればイランの核合意は完全に骨抜きになる。

原油市場では中東の地政学リスクの高まりに対する警戒感が出ている。生産量の回復が示されたサウジアラビアの復旧ペースの確認は難しい。石油施設の攻撃を巡り米国はイランの関与を疑うなど、中東情勢も緊迫が続く。供給懸念は拭いきれず、原油は攻撃前より高い価格が続く。

17日に大きく反落したニューヨーク市場の原油先物は、18日の通常取引で1バレル58ドル程度で推移する。1バレル50ドル台半ばだった攻撃前の水準を上回ったままだ。

サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は17日、9月末に日量1100万バレルに生産能力が回復すると表明した。楽天証券の吉田哲コモディティアナリストは「安定供給を強調し、強気の見通しを示した可能性もある」と指摘する。供給回復の判断には、実際の産油量の確認が必要との見方が根強い。

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