タイ新政権2カ月、野党が追及強化 首相就任手続きに不備
閣僚の海外服役疑惑も

2019/9/18 18:53
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【バンコク=村松洋兵】タイで発足から2カ月がたったプラユット政権に対して野党が追及を強めている。首相の就任手続きに不備があったとして18日に国会で集中審議が開かれた。閣僚の一人が過去に麻薬密輸の罪で海外で服役していた疑惑も浮上している。10月に本格化する2020年度予算案の審議を巡る与野党の攻防激化が必至だ。

「首相と内閣は明らかに憲法違反している」。18日、タクシン元首相派の最大野党、タイ貢献党のソムポン党首はバンコクの議場でプラユット首相を厳しく追及した。

問題視しているのは7月16日の新内閣発足時の首相の宣誓式だ。タイの憲法は首相が就任に先立ち、憲法で定めた文言を国王に対して宣誓すると規定している。ところがプラユット氏は「憲法を擁護し順守する」との部分を読み落とした。

野党は「違憲であり内閣の発足は認められない」と批判。プラユット氏は国会での討論を避けてきたが、18日にようやく集中審議に応じた。同氏は言及を避けたが、ウィサヌ副首相が「国王と政権の間の問題」と答弁し、既に国王から支持を得ており批判は当たらないとした。与党は幕引きにしたい考えだが、野党は追及の構えを崩さない。

9月に入って政権内にスキャンダルも持ち上がった。オーストラリア紙シドニー・モーニング・ヘラルドが、タマナット農業協同組合副大臣が豪州で1993年に麻薬密輸の罪で逮捕され4年間服役したと報じた。

タマナット氏は3月の総選挙後の連立工作で小政党の支持をとりつけ、政権樹立をまとめた功労者とされる。本人は疑惑を否定するが、同氏には学歴詐称の疑いも浮上しており、野党は首相の任命責任の追及を強める。

国会の論戦は今後、20年度予算案(19年10月~20年9月)が焦点となる。新政権発足の遅れで、与党は年内に可決し20年1月からの執行を目指す。憲法の規定で19年10月以降は社会保障費などの義務的経費は前年度予算を踏襲して執行できるが、景気刺激策など新規施策は予算案が成立しないと実行できない。

予算案を審議する下院(定数500)は与党が252議席とわずかに半数を上回るだけだ。もともと254議席で野党と僅差だったが、小政党所属の2人が、政策が反映されないとして相次ぎ離脱した。人事などに不満を持つ与党議員がさらに造反すれば、予算案は否決される可能性がある。

一連の疑惑に国民は厳しい視線を向けている。タイ政治に詳しいタマサート大学の水上祐二客員研究員は「国民の不満が爆発すれば政権は追い込まれる」と指摘する。

タイの19年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比2.3%増で、4年9カ月ぶりの低成長だった。米中貿易戦争の影響で輸出が減り、国内消費にも陰りが見えている。政治混乱で新年度の予算執行が遅れれば、さらに経済が悪化する恐れがある。

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