台湾総統選、二大政党の争いに 郭氏は出馬見送り
香港デモで高まる対中警戒感 有権者に影響も

米中衝突
政治
2019/9/17 19:30
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【台北=伊原健作】2020年1月の台湾の次期総統選の構図が17日、大筋で固まった。鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)前董事長(68)の前夜の不出馬表明を受け、独立志向を持つ与党・民主進歩党(民進党)から再選を目指す蔡英文総統(63)と、対中融和路線の最大野党・国民党の候補、韓国瑜・高雄市長(62)が対決する構図となる。香港の混乱で生じた対中警戒感の高まりが有権者の行動を左右しそうだ。

17日夕、実績のある政党の推薦のない総統選候補者の届け出が締め切られた。前夜に郭氏は無所属での出馬を断念すると表明。若者らに人気のある柯文哲・台北市長(60)も動かず、二大政党が対決する構図が定まった。

郭氏は「政治への関与はやめない」と今後に含みを残した。理論上は11月22日までに小政党の親民党から出馬することが可能だが、郭氏の側近は17日朝に「そうした計画はない」と否定した。

民放TVBSの直近の世論調査では蔡氏の支持率は49%で、国民党の韓氏を7ポイントリードする。

「(総統選は)台湾が自由で民主的な生活を続けられるかを決める戦いだ」。蔡氏は8日、台湾中部での談話でこう強調し、対中強硬姿勢をとる蔡政権へ圧力を強める中国に対抗する自身への支持を訴えた。

蔡氏は16年に総統に就任してから庶民生活の底上げなどで成果が出ず人気低迷が続いていた。だが19年6月から香港で「逃亡犯条例」改正案を契機とする抗議活動が激化すると情勢が一変。香港と同じ「一国二制度」による中台の統一を鮮明にする中国への警戒感が高まり、中国と距離を取る蔡氏に支持が戻ってきた。

一方、国民党の韓氏は失速している。高学歴のエリート層と異なる「庶民総統」を自称し、経済格差の拡大に不満を持つ人々の熱狂的な支持を集める。ただ「両岸(中台)関係を改善して大金を稼ぐぞ」など掛け声が派手な半面、裏付けとなる政策が伴わず、中間層に支持が広がらない。直近では東南アジアからの外国人労働者への人種差別発言など失言も相次ぐ。

台湾誌「天下雑誌」が今月掲載した台湾の全22県市の首長の満足度ランキングでは最下位に沈み、政治手腕に疑念が強まる。

国民党から離党した郭氏の出馬見送りで、党の分裂という最悪の事態は免れた。韓氏は「郭氏の支持を勝ち取りたい」と応援を求めるが、党を公然と批判していた郭氏が応じるかは不透明だ。

また民進党の陳水扁政権で副総統を務め、その後党と決裂した呂秀蓮氏は台湾独立派の支持を受けて出馬を表明した。11月までに有権者数全体の1.5%に当たる約28万人の署名を集められれば、正式に参戦できる。

20年1月11日の投開票までは4カ月弱あり、蔡氏の優位も盤石ではない。選挙戦を左右しそうなのが米中の思惑だ。

中国は親中的な国民党の勝利を望み、蔡政権に圧力を強める。8月に中国大陸から台湾への個人旅行を当面禁止。9月16日には中国の働きかけでソロモン諸島が台湾との断交を決めた。

一方で米国は親米的な蔡政権に肩入れする。8月には中国への配慮から10年以上にわたって控えてきたF16戦闘機の台湾への売却を決め、台湾の対中防衛を支える姿勢を示した。

台湾では対中交流で経済的な利益を享受したいと望む半面、統一には否定的な立場が主流だ。米中対立が激化するなか、投開票当日まで台湾の民意は揺れそうだ。

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