中国、南太平洋で影響力 台湾断交のソロモンと国交へ

米中衝突
2019/9/17 19:45
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【北京=羽田野主、シドニー=松本史】中国は近く南太平洋の島しょ国・ソロモン諸島と国交を樹立する見通しだ。ソロモンが台湾との外交関係を解消したことを受けたもの。背景には経済力を武器に国際社会で台湾を孤立させる中国の戦略がある。国交が樹立すれば中国が米豪の海上交通路(シーレーン)に関係する南太平洋地域での影響力を高めるのは確実だ。

中国外務省の華春瑩報道局長は17日の記者会見でソロモン諸島の台湾断交の決定を「高く称賛する」と話した。「両国関係発展の新時代を切り開きたい」と述べ、国交樹立に期待感を示した。

豪ロウイー研究所によると、中国は太平洋諸国に2011年以降、総額12億ドル(約1300億円)超の経済支援をしてきた。ソロモンにも最大の貿易相手国という立場を背景に、1983年以来の台湾との外交関係を絶つよう働きかけていた。中国が今年最も重視する10月1日の建国70周年を前に決着を急いでいた節がある。

台湾もソロモン諸島へ8年間で約100億円を援助してきたが…(首都ホニアラに立つ台湾からの支援を記す看板)

台湾もソロモン諸島へ8年間で約100億円を援助してきたが…(首都ホニアラに立つ台湾からの支援を記す看板)

中国にとってソロモンとの国交樹立は特に軍事面で大きな意味を持つ。

中国は近海から太平洋など遠海に活動範囲の拡大を志向している。近海防御戦略として沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」を設定。さらに米国の影響力排除をめざし、日本の小笠原諸島からグアム、サイパンを経てパプアニューギニアに至る「第2列島線」を設ける。ソロモン諸島はこの第2列島線近くに位置し、南太平洋の戦略的要衝を占める。

中国がソロモンの西部州ノロ港の拡張を意図しているとの見方は根強い。台湾当局は「中国は軍事基地の建設を目指している」(外務省)と警鐘を鳴らしていた。海域での権益確保や戦略物資の輸送ルートの安全確保につなげていく狙いがあるとされる。

ソロモンに近いバヌアツではすでに中国が17年後半から大規模な港を建設している。バヌアツからは南太平洋の米豪の軍艦の動向が一目でわかる。米議会の諮問機関は18年、第2列島線を巡って、中国軍が陸海空それぞれで米軍に対抗する能力があるとの報告書をまとめた。

中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部はソロモンとの国交樹立を足がかりに、20年1月の台湾総統選に圧力をかけていく。

16年に発足した、台湾独立志向の蔡英文政権が外交関係を失うのは6カ国目。なかでもソロモンは台湾がアジア太平洋地域で外交関係を持つ国のうち最大だった。台湾を外交承認するのはキリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ法王庁)など残り16カ国となった。

蔡英文総統は16日に「中国は絶えず台湾を国際的に孤立させようとしている」とツイート。「台湾の人々の勇気をくじき、(高度な自治を認める)『一国二制度』を受け入れさせようとしている。断じて受け入れない」と続けた。

米国やオーストラリアはソロモンをきっかけに南太平洋での台湾との断交ドミノが起きる事態を警戒する。今回の断交が今後ツバルやナウル、パラオなど台湾と国交を結ぶ残る域内5カ国にも波及する可能性がある。ナウルでは中国に批判的だったワガ前大統領が19年8月の選挙で落選した。9月に総選挙があったツバルでも議員が大幅に入れ替わった。中国がこうした国への攻勢を強めるのは確実だ。

米政府内からは「グアムに近い南太平洋に中国の軍事拠点ができれば、西太平洋における米軍の優位性が損なわれる」と危惧する声がでている。

中国共産党系メディアの環球時報は17日付の社説で「米国の支持があっても台湾が国交を結ぶ国を失い続けるのは止められないだろう」とけん制した。

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