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転職・異動では解決しない キャリア迷路からの脱出法

仕事と遊びの境界線をなくす「公私混同力」のススメ(1)

キャリア迷路から脱出するには「公私混同力」がカギに(写真はイメージ=PIXTA)

「今の職場では力を発揮できない」「この仕事は本当にやりたいことではない」という思いから、「キャリア迷路」にはまっている人が増えています。しかし、こうした悩みは、転職や異動などで必ずしも解決できるわけではありません。キャリア迷路から抜け出すためのコミュニティーを主宰する池田千恵氏は、まずは今ある環境を生かしつつ「公私混同力」を磨くことが先決だと指摘します。仕事で培ったスキルを無償で提供する「プロボノ」といった形で新しいコミュニティーとの関係性を築いてみたり、さらにはネットで単発仕事を請け負う「ギグエコノミー」を利用して自分の力を試してみたりすることも可能な時代になってきました。この連載では、これからの時代に必要な「公私混同力」について様々な事例を交えて解説します。

◇  ◇  ◇

「キャリア迷路」にはまる人が増えているのはなぜ?

「今の職場ではある程度結果を出してきた感覚があり、新しい環境に身を置いてみたい。でも、いきなり独立や転職というのもちょっと違う気がするし、異動を希望しても通るか分からない」

「もしかしたら結果がでたのは『たまたま』や 『会社の看板』かもしれないと思うと自信がなくなってくる」

「今までの昼も夜もない働き方のままでは子どもを育てながらキャリアアップすることが難しい。どうすればよい?」

「仕事は淡々と続けていてある程度結果をだしてはいるけれど、本当にやりたいこととは違う気がする」

キャリアアップ・転職・起業・副業を考えている人のためのオンライン学習コミュニティー「朝キャリ」を運営している筆者のもとには、自分のキャリアをどう構築していくかに迷い、方向性を決めて前に進みたいという相談が多く寄せられます。「キャリアに迷う」というと、仕事がうまくいっていない人がはまるワナのように思われがちですが、そうとも限りません。会社でめざましい結果を出し、向かうところ敵なし!と周囲には思われているような人からも、上記のような悩みを聞くことが増えました。

筆者は「キャリア迷路」にはまってしまう人が増えている理由は、次の2つだと考えています。

1.人工知能(AI)、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、副業解禁などといった労働環境の変化で会社の将来が見えない
2.その結果、今の会社から飛び出して環境を大きく変えないとキャリアの展望が開けないという焦り、思い込みがある

順番に解説しましょう。

RPA、AI、副業解禁というキーワードが私たちの不安をあおる

今まで専門性が高く、機械に代替されることはないと思われていた銀行や弁護士、会計士といった業界から、AIやホワイトカラーの単純な間接業務を自動化する技術であるRPAによる機械化が進んでいます。「つぶしがきく業界だから大丈夫」ということは、もはやどの業界にも言えない状態です。今後は一人ひとりの創造性が肝となり、作業ではなくビジョンを描き、実行に移すといったような、経営者的な視点が会社員にも求められるようになるでしょう。となると、「私にはそんな能力はない」と自分の仕事を振り返り不安になってしまうのも無理はありません。

カナダのナショナル・ポストの発表によると、米国では2020年までにフリーランスの人口が労働者全体の50%にものぼると予想されているそうです。

日本は伝統的に新卒の社員を採用した上でジョブローテーションを繰り返し、何十年もかけてゼネラリストにしていく方法を今までは取っていたのに対し、米国ではもともと即戦力としてのスキルを求めるという違いがあるので、米国の状況がそのまま日本に当てはまることはないと考えています。しかし、日本でもギグエコノミーや、副業解禁の流れも見られます。米国で起きているビジネスの流れは数年後には日本にも起きると言われており、いずれ日本にも波が押し寄せる可能性は高いでしょう。

このような環境の変化で私たちが直面するのは「私は社内にどっぷり漬かって井の中の蛙(かわず)になってはいないだろうか?」「私にできることなんてないのではないか?」「自分には強みはあるのだろうか?」「今自分がしている仕事は、つぶしがきかないものではないか?」という不安です。

特にホワイトカラーの仕事に従事していると、労働の対価がいくらか、会社にどのくらいの価値を提供できているか、というコスト感覚を直接意識する機会が少ないため、自分の仕事の価値を客観的に知ることはなかなかできません。このことも不安感をあおります。自分自身の価値という「値付け」は、原価がもともと分かる商品の値付けとは違うからです。

今の仕事を頑張りながら将来に備えることはできる

不安になると隣の芝生が青く見えるもの。今の会社では将来は見えないから、つぶしがきかないからといって起業講座や副業講座に通って勉強したり、資格試験に励んだりする人も多く、実際数十万もする高額講座に通っている人の話も聞きます。しかし、「逃げ遅れないように」という気持ちで焦って起業や副業、勉強を始めたところで、果たして良い結果となるでしょうか。筆者はそうは思いません。

銀行など守秘義務が多い職種でも副業解禁の流れが始まったとはいえ、まだまだ少数派です。副業が解禁されている会社でも守秘義務や同業他社の兼務禁止など、配慮すべき点があります。副業で本業に支障をきたすまで働き、心身ともに疲弊し「ひとりブラック企業」化してしまうのも避けたいところですよね。「逃げ遅れないように」という不安感におびえて何をしたいかが見えない中で行動に移す前に「今の自分にできることは何か?」を、今の職場にいながら考えていきませんか?

AIやRPAに取り換えられないのは、革新的なアイデアや、周りがわくわくしてどんどん巻き込まれていくようなミッションといったような、人間にしか創造し得ない価値です。とするならば、仕事を遊びのように楽しむこと、つまり「公私混同」でわくわくするようなことを、今この環境から探してみるというのもひとつの手ではないでしょうか。

自分の仕事を「価値」で捉え直してみよう

「そうはいっても、今の仕事でわくわくすることなんてない」「公私混同なんて言語道断」という人も多いかもしれません。しかし、今の仕事を「つぶしがきかない」という言葉でジャッジし、不安感から解決策を外に求めて思考停止しているから、目の前にある「わくわく」に気付いていないという可能性もあるのではないでしょうか。

自分の仕事を「作業」と捉えれば「つぶしがきかない」ですが、「価値」と捉えれば「つぶしがきく」ようになります。例えば現場の事務工程に精通している人だからこそ「機械にもできる/機械には任せられない」作業の目利き力、判断力は磨かれます。自分の仕事は所詮機械にとって代わられると思って仕事をするのと、自分の仕事は人間にしかできない目利き力を育む仕事だと思って仕事をするのとでは、おのずと仕事への意義や楽しみの見いだし方は違ってくるでしょう。今ある会社という環境を使って、せっかくだから自分のやりたいことを実現してやろう! そう思えば日々の仕事にも張り合いがでてくるのではないでしょうか。

今の仕事を頑張りつつも、来る時代に備えることは可能です。副業NGの会社でも、プロボノやコミュニティー運営といった形で今まで仕事で培った知見を形にして本業との相乗効果を出している例、社内のリソースを活用して社外を横断するプロジェクト型で仕事を進めている例、副業OKの会社で本業と副業の相乗効果を生んでいる例、海外の駐在員の妻という立場からキャリアを切り開いている例など、様々な働き方があります。

この連載では、こうした挑戦をしている人たちのインタビューを交えつつ、来るべき時代の生き方を提案していく予定です。今の仕事を続けながら「わくわく」を見つけ、「公私混同力」で仕事もプライベートも楽しむ方法を一緒に探していきましょう。

自由な人生を送りたければ、今の不自由を愛することが先決です。不自由さの中からどうやって創意工夫してきたかの記録をこれから残していきましょう。不自由さから自由を見つける方法こそが、あなただけが知っていて、皆が知りたいことです。それを蓄積していくことで、自分の経験が周囲の役に立つ日がくるはずです。この連載を通じてあなたの一歩を応援していきたいと思います。

池田千恵
朝6時 代表取締役。朝イチ業務改善コンサルタント。慶応義塾大学卒業。外食企業、外資系企業を経て現職。企業の朝イチ仕事改善、生産性向上の仕組みを構築しているほか、個人に向けては朝活でキャリア迷子から抜け出すためのコミュニティー「朝キャリ」(https://ikedachie.com/course/salon/)を主宰。10年連続プロデュースの「朝活手帳」など著書多数。

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