日本の「私写真」に影響を与えたロバート・フランク氏

文化往来
2019/9/19 6:00
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写真集「アメリカ人」で世界的に知られる写真家、ロバート・フランク氏が94歳で亡くなった。スイスのユダヤ系家庭に生まれ、20代前半で米国に移住。1955年にグッゲンハイム財団の奨学金を得て、中古車で全米を旅しながら数万枚もの写真を撮影する。約80枚を収録した「アメリカ人」は日常のスナップショットで米国社会を浮き彫りにした伝説的な代表作だ。

ロバート・フランク「映画のプレミア、ロサンゼルス」(1955年)Movie Premiere, Los Angeles, 1955
(C) Robert Frank

ロバート・フランク「映画のプレミア、ロサンゼルス」(1955年)Movie Premiere, Los Angeles, 1955
(C) Robert Frank

50年代の米国社会は反共的な雰囲気を強める一方、中産階級が経済的な繁栄を謳歌した。しかしフランク氏がフィルムに収めたのは、ウエートレスや工場労働者、黒人の乳母、芝生に寝転ぶ若いカップルらの、ありのままの素顔。豊かで自由な米国のイメージはあまり感じられない。当初は国内での発表が難しく、58年にフランスで刊行。翌年に作家J・ケルアックの序文付きで米国版が出版された後は再刊を重ねた。

ロバート・フランク「聖フランシス、ガソリンスタンド、市役所 - ロサンゼルス」(1955年)St. Francis, gas station, and City Hall - Los Angeles, 1955
(C) Robert Frank from The Americans

ロバート・フランク「聖フランシス、ガソリンスタンド、市役所 - ロサンゼルス」(1955年)St. Francis, gas station, and City Hall - Los Angeles, 1955
(C) Robert Frank from The Americans

写真評論家の飯沢耕太郎氏は同作が「日本の写真家たちに決定的な影響を与えた」と話す。「あくまでも個人的な視点に徹し、日常の厚みを捉えていくスタイルは、70年代、生と写真とを強く結びつける日本の『私写真』の重要な水脈になった」と指摘。その仕事に共感したフランク氏も「自作にそのエッセンスを取り込んだ」という。80年代以降は、「センチメンタルな旅」(71年)で自身の結婚を題材にした荒木経惟や、故郷の炭鉱を撮影した鈴木清らと交友を深める。「日本の写真界にとって最後まで"恩人"の一人だった」と振り返る。

代表作である写真集「アメリカ人」(2008年、シュタイデル社刊)

代表作である写真集「アメリカ人」(2008年、シュタイデル社刊)

「アメリカ人」の表紙を飾った写真のオリジナルプリントには、近年約7千万円の値がついた。フランク氏は「自作が若い人の目にふれにくくなると気にしていた」(ドイツの編集者ゲルハルト・シュタイデル氏)というが、その写真が今なお古びていない証左でもあろう。清里フォトアートミュージアムで「アメリカ人」掲載作を含む106点を展示する「ロバート・フランク展―もう一度、写真の話をしないか。」が23日まで開催されている。(窪田直子)

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