連続利下げにFRB葛藤 0.25%有力、物価は上振れ

2019/9/16 19:00
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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は17日から2日間の日程で米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。7月末の会合に続き、0.25%の利下げに踏み切る公算が大きい。製造業の景況感の下振れが最大の理由だが、貿易戦争など政治リスクは先行きが読みにくい。連続利下げには物価や資産価格の上昇を不安視する反対論も一部に残る。

FRBのパウエル議長は連続利下げの可能性を示唆するが、一部には慎重論も残る(6日、スイス・チューリッヒ)=ロイター

先物市場では8割の確率で、17~18日のFOMCで0.25%の利下げに踏み切ると織り込んでいる。FRBは7月末の会合で10年半ぶりの利下げを決断したばかりだが、パウエル議長も6日の講演で「世界景気は減速が続きそうだ。我々は成長持続へ適切に行動するだろう」と主張し、連続利下げの可能性を示唆している。

米景気は拡大局面が11年目に突入するなど、底堅さを残している。金融緩和が求められるのは、トランプ米政権が仕掛けた中国との貿易戦争で製造業の景況感が弱含んでいるためだ。米サプライマネジメント協会(ISM)が分析する製造業景況感指数は、8月に急落して好不況の境目である50を3年ぶりに下回った。4~6月期は設備投資が3年ぶりに前期比マイナスに転落しており、7月末の利下げも企業心理の改善につながっていない。

堅調だった雇用も徐々に弱含んできた。2019年1~8月の就業者数の伸びは月平均15万8千人にとどまり、2018年の同22万3千人から大きく減速した。とりわけ製造業は19年の伸びが同6千人と、18年の同2万2千人から急ブレーキがかかっている。FRB高官からは「消費に弱さが表れるまで利下げを待つのは遅すぎる」(ダラス連銀のカプラン総裁)と追加緩和論が強まる。

FOMC内には「0.5%の利下げについても、しっかり議論すべきだ」(セントルイス連銀のブラード総裁)と、大幅な追加緩和案も浮上していた。ただ、企業心理を下押ししてきた貿易戦争は先週、米中両国が閣僚級協議を再開すると決め、株価もダウ工業株30種平均で最高値に迫る勢いをみせた。

停滞していた物価にも再びインフレ圧力がにじんできた。8月の消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除いたコアベースで前年同月比2.4%上昇し、約1年ぶりの高い伸び率となった。先物市場は株高と物価上昇を受けて、0.5%の大幅な利下げに踏み切るとの観測は現時点ではゼロになった。

FOMC内には利下げに反対論も残っている。7月末の利下げに反対票を投じたカンザスシティー連銀のジョージ総裁は、8月下旬の米テレビ番組で「金融緩和の必要は感じない」と述べ、追加利下げへの反対姿勢を鮮明にした。ボストン連銀のローゼングレン総裁も9月3日の講演で「物価上昇が続く限り、政策行動は必要ない」と述べ、利下げに反対票を投じる考えを示唆した。

17~18日のFOMCでは、22年までの政策金利見通しも公表する。先物市場ではさらに1~2回の追加利下げを見込んでいるが、物価や株価の上昇で「19年、20年とも、もう追加緩和はないだろう」(JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ氏)との見方も浮かぶ。パウエル氏も「米景気は底堅く、物価上昇率は(目標の)2%に戻っていくだろう」と楽観論を主張し始めている。

もっとも、トランプ米大統領は「FRBは金利をゼロかそれ以下に下げるべきだ」と、マイナス金利政策も含めた極端な金融緩和を要求し始めた。FRBが利下げの小休止を示唆すれば、ホワイトハウスの緩和圧力が一段と強まるのは避けられず、パウエル議長の更迭論が再び浮上しかねない。パウエル氏は「金融政策面で政治は一切考慮しない」と主張するが、FRBは組織防衛もにらみながら政策判断せざるを得ない。

金融緩和が市中金利の引き下げにつながって実体経済に影響を及ぼすのは、半年程度のタイムラグがあるとされる。そのため金融政策は常に先手が求められるが、貿易戦争のような政治リスクは先が読めない。企業心理と雇用情勢が弱含む中で、株価や物価には上昇圧力がにじむ。パウエル議長は政治と市場の圧力を受けながら「政策対応の見本となる先例がない」と苦悩を深めている。

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