中東緊迫、原油が急騰 ブレントは一時28年ぶり上昇率

2019/9/16 7:29 (2019/9/16 17:50更新)
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【ロンドン=篠崎健太、ニューヨーク=後藤達也】サウジアラビアの石油施設への攻撃を受け、原油価格が急上昇した。国際的な指標原油の北海ブレント原油先物は16日、一時19%も上昇。原油急騰による物価上昇が景気を冷やすおそれもあり、各国で株価が下落した。トランプ米大統領は15日、原油の供給不安を和らげるため「必要に応じ、戦略石油備蓄を放出することを承認した」と表明した。

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北海ブレントの期近物は一時1バレル71.95ドルと前週末に比べ11.73ドル上昇した。日中の上昇率としては湾岸戦争が始まる直前の1991年1月以来、約28年半ぶりの大きさ。ニューヨーク市場の原油先物も一時1バレル63.34ドルと15%強上がり、ともに約4カ月ぶりの高値を付けた。

その後は上げ幅をやや縮め、北海ブレントはロンドン市場で1バレル65~67ドル程度で推移した。当面の利益を確定する売りが出たが、前週末比でなお1割前後高く緊張は解けていない。

サウジの国営石油会社サウジアラムコの石油施設が14日、無人機の攻撃を受け日量570万バレルの生産が停止した。同国の産油量のおよそ半分、世界の石油供給量の5%以上に当たり、供給不足への懸念が高まった。

国際エネルギー機関(IEA)によると石油輸出国機構(OPEC)の余剰生産能力は8月時点で日量321万バレルにとどまる。このうちサウジは227万バレルを占める。ロイター通信は16日、アラムコの操業について説明を受けた関係者の話として、全面復旧まで「数カ月かかる可能性がある」と報じた。

トランプ米大統領は原油高に懸念を強めている(11日、ワシントン)=AP

トランプ米大統領は原油高に懸念を強めている(11日、ワシントン)=AP

トランプ氏は原油市場が開く直前にツイッターで、原油の輸入停止などの非常事態に備えた戦略石油備蓄の放出承認を表明した。IEAは加盟国に一定量の原油備蓄を義務付けており、6月時点で民間分とあわせ純輸入量の330日分が確保されている。菅原一秀経済産業相は16日「IEAや関係国と連携し、必要があれば備蓄の協調放出などを通じて必要な供給量をしっかり確保する」との談話を公表した。

OPECのバルキンド事務局長は同日、サウジの供給減を補うために増産に転じるか検討するのは時期尚早との見解を示した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)はアラムコが16日中に打撃を受けた生産の約3分の1の回復を目指す方針だと報道。サウジは供給が減った日量570万バレルの約30日分の在庫を国内に持つとの専門家の見方も伝えた。

石油備蓄の放出や在庫の取り崩しが当面は供給を肩代わりするが、在庫や備蓄の水準が下がることで市場の不安感は増しかねない。OPECの協調減産を主導するサウジは率先して産油量を絞っており、有事の際の増産余力が最も大きかった。そのサウジが調整弁としての役割を十分に果たせなくなれば、新たに突発的に供給が滞った際に相場は急上昇しやすくなる。

同様の攻撃が続く可能性も否定できない。バルキンド氏は「以前より安全問題への不安が大きくなっている」と訴える。今回の攻撃で犯行声明を出した親イラン武装組織フーシの報道担当者は16日、サウジの石油施設が「いつでも標的になる」と述べ、攻撃継続の方針を表明した。フーシ系メディアが伝えた。

株式市場では景気への影響や地政学リスクを警戒し、株価が下落した。米ダウ工業株30種平均は16日、一時先週末の終値比で約161ドル安まで落ち込んだが、その後は約120ドル安の2万7100ドル前後で推移している。欧州株も売りが先行し、燃油高による収益悪化の懸念で独ルフトハンザ、仏蘭エールフランスKLMなど航空株が大幅に値下がりした。

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煙が上がるサウジアラムコの石油関連施設(14日、サウジ東部アブカイク)=AP

煙が上がるサウジアラムコの石油関連施設(14日、サウジ東部アブカイク)=AP

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