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横浜流星 役を生きるとき、普段湧かない感情を感じる

2018年に主演作『虹色デイズ』など4本の映画が公開された横浜流星。19年1月期には『初めて恋をした日に読む話』(以下、はじこい)でメインキャストに抜てきされ、初めてGP帯(ゴールデン・プライムタイム:19時~23時)の連ドラにレギュラー出演した。深田恭子ふんする塾講師・順子に恋心をぶつける、髪をピンクに染めた不良高校生・由利匡平を演じてインパクトを残し、匡平の呼び名"ゆりゆり"が「Yahoo!リアルタイム検索ワードランキング」で1位になるなど、この作品で人気を決定的なものとした。

1996年9月16日生まれ、神奈川県出身。小学校6年生のときにスカウトされ、11年から活動開始。今年は主演映画『愛唄-約束のナクヒト-』『チア男子!!』、出演映画『LハートDK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』が公開された(写真:中村嘉昭)

「『はじこい』は僕にとって1番の転機となる作品になりました。今までの経験で得たものをすべて出したつもりです。

これまでは同世代の方との共演が多かったのですが、深田恭子さん、永山絢斗さん、中村倫也さんといった先輩方と一緒にお芝居をさせていただいて、得るものがたくさんありました。もちろん僕自身、精一杯真っすぐに役に取り組みましたが、匡平の魅力を引き出してくれたのは、監督をはじめ、お三方のおかげだと思っています。

1話の試写会のときに、僕はまだ『このままで大丈夫かな』っていう不安があって。そのときに永山さんがご飯に誘ってくれたので相談したら、『流星君のやり方は間違っていないから、貫けば大丈夫だよ』と言ってくれて、その言葉に救われました。中村さんは、ずっとギャグを言って笑わせてくれるんですよ。中村さんがいるだけでみんなが笑顔になって、あの場の盛り上げ方や、空気の作り方は、自分が経験を重ねてもできないものだなと感じました」

戦隊ものの後に最初の目覚め

『はじこい』放送後の6月には、鍛えた体で表紙に登場した雑誌『anan』が、発売日前にネット書店で販売予定数が完売するなど、横浜への世間の興味は高まるばかり。主人公(田中圭)と一緒に事件の謎に迫る二階堂忍役で出演した『あなたの番です-反撃編-』(日本テレビ系)も話題になった。

「『anan』は、中学時代の男友達から『買ったよ』と連絡が来て(笑)。『何オマエ脱いでんだ』と茶化されて、恥ずかしかったけどうれしかったです。普段からトレーニングはしているんですけど、『はじこい』に集中していたら少し痩せてしまって。撮影前に元の体重に戻して、鍛え直しました。

『あな番』はすごく楽しかったです。サスペンスはもともと好きで、やってみたかったジャンルでした。緊迫感のあるオリジナル作ですし、匡平を演じた後のタイミングで、イメージの異なる二階堂役をできてよかったと思っています」

『ニコ☆プチ』や『ニコラ』(2011年~15年)でメンズモデルを経験。14年の戦隊ものの後は、深夜ドラマや『オオカミ少女と黒王子』(16年)などの青春映画で経験を積んだ。18年は単独主演を果たし、飛躍の年に

芸能界に興味はなかったが、スカウトをきっかけに10年からモデルの仕事を始めた。演じることへの最初の目覚めは、俳優デビューから約3年がたった、『烈車戦隊トッキュウジャー』が終わる頃だったという。

「戦隊もので約1年間、同じ役に向き合ったことが大きかったです。でも、(声を張って)『待て!』『お前を倒す!』みたいな戦隊もの特有の芝居がなかなか抜けなくて(笑)。オーディションでも指摘されたり。ワークショップに行って、表現の仕方にもいろいろあることを知って、もっとちゃんと頑張りたいと思いましたし、悔しさも初めて味わいました。ちょうど高校を卒業する頃だったこともあって、この世界で勝負しようと決めました」

地道に作品に取り組み、今年に入って連ドラで存在感を増した横浜だが、またイメージの異なる主演映画が9月6日に公開になった。『いなくなれ、群青』は、河野裕の小説『階段島』シリーズが原作の、ミステリアスな空気感を持つ青春ファンタジー。平穏な生活を望む悲観主義者の主人公・七草を演じている。

(写真:中村嘉昭)

「原作を読んだときは、ミステリー要素もありながら、幻想的な世界観が強く印象に残って、早くこの『群青』の世界に入りたいとワクワクしました。台本も原作に寄り添っているので、『階段島』シリーズのファンの方にも楽しんでもらえると思います。

七草は感情を表に出さないタイプで、割と自分に似てると思いました。共感できる部分が多い。僕も七草ほどではないですが、物事は悪い方向に考えがちで(笑)、『先々マイナスになるかもしれないから、やらないでおこう』みたいに、守りに入ることがありますし。ただ、やっぱり演じるのは難しかったですね。主演って、受ける芝居が多いじゃないですか。みなさんのお芝居を受け止めて、それを返していくわけですが、心の中では感情が芽生えつつも、表には出さない。そこは頭を悩ませた部分です。

『群青』は、小説だから成り立つような詩的な表現も多くて、見る人によっては解釈も違ってくると思うので、だからこそ、ニュートラルでいようというのは意識しました。七草が何を考えているのか分からない感じは、狙ったところでもあります。

柳明菜監督は、感情を優先してくださる方でした。自分が表現したことを尊重してくださったので、心強かったです。『もっと悲しく』とか分かりやすく言うのではなく、例えば受話器を取る張り詰めたシーンでは、『この電話の向こうで、誰かが死んでいると思ってください』とか伝え方が独特で、感性がすごいと感じました」

実は自信がないけれど全力で

『愛唄-約束のナクヒト-』『チア男子!!』に続き、今年3作目の主演映画となった。作品の真ん中に立つことについては、どのように感じているか。

「責任を感じますね、すごく。自分はまだまだ作品を引っ張れるようなタイプではないし、何事においてもまだ自信がない。ただ、やらせていただく以上は、できる限界まで出せるように取り組んでいます。

芝居って正解がないから、『よーし、決まったぜ』とはなかなかならない。全力で役作りをして、役として生きるんですけど、悩み続けてきています。

僕にまず足りないのは、感情の解放です。やっぱり感受性豊かな人たちのほうが、お芝居も上手ですよね。普段、僕はあまり泣かないけれど、芝居をやっているときは自分じゃないので涙が出ます。でも、もっと解放できたら、表現もまた全然違ってくると思うんです。

その分、役として感情を出せるのは気持ちいいです。普段は湧かないような感情が、役として生きているときは感じるので。不思議だなと思いつつ、演じることの楽しさを味わっています」

『いなくなれ、群青』

シリーズ累計90万部の小説が原作。「階段島」は捨てられた人たちの島。そこで七草(横浜)と真辺(飯豊まりえ)は再会する。「不幸じゃなければ、幸福だと言い張ることだってできる」と考える悲観的な七草に、彼の幼なじみの真辺は「この島を一緒に出よう」と言う。島にまつわる謎を解き明かそうとするが、やがて明かされる真相は、青春の残酷な現実を突きつける。(公開中/KADOKAWA、エイベックス・ピクチャーズ配給)

(C)河野裕/新潮社(C)2019映画「いなくなれ、群青」製作委員会

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2019年9月号の記事を再構成]

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