本島の作品 瀬戸内国際芸術祭2019

2019/10/3 7:00
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(1)石井章「Vertrek〔出航〕」(秋のみ)★★★

本島港に降り立つと最初に出会う作品は、帆船・咸臨丸をかたどった鋼の彫刻だ。宙に浮くように設置され錆の風合いが魅力的な彫刻は、いまにも海に向けて滑り出しそう。日本で初めて太平洋を往復した咸臨丸には本島を含む塩飽諸島出身の船員が多く乗り組んでおり、いまも本島には咸臨丸船員の生家が残る。

(2)川口豊・内藤香織「シーボルトガーデン」(秋のみ)★★★

海辺から山側に進路を変えて急坂を登ると、庭園が現れる。江戸時代に来日し、瀬戸内海の美しさをたたえる文章を残したドイツの医者・博物学者シーボルト。彼が欧州に持ち帰ったという日本の植物を育てている庭は植物の甘いにおい、虫の気配も豊かにたたえる。

(3)五十嵐靖晃「そらあみ〈島巡り〉」(秋のみ)★★★★

春会期に沙弥島など東の島々の漁師らが編んだカラフルな漁網が、秋会期に本島をはじめとする西の島々の漁師らによる漁網とつながり全長120メートルに編み上がった。見る角度、時刻、空や海の状態で刻々と表情を変える網は島と島のつながりを象徴する旗のように、瀬戸大橋を望む波打ち際で風と波を受けて優雅に揺れる。

(4)中村厚子「海境」(新作、秋のみ)★★★★

網元の家だったという古民家に塩飽の海を再現するインスタレーション。暗い屋内にレーザーとスモークをあてると、あたかも海面の潮の流れや波頭に見えてくる。大いなる恵みでありながら、時に厳しい顔を見せる海。生と死、現世と異界の境としての海とともに暮らす島の人々の生活に思いをはせる。

(5)村尾かずこ「漆喰・鏝絵かんばんプロジェクト」(秋のみ)★★★

店や民家の軒先に漆喰や鏝絵を使った看板を据え付けるプロジェクト。島の人々の暮らしや歴史、かつての島の姿を聞き取り、図案化した看板があちらこちらに。柔らかい印象の図案と漆喰の素材感が好相性で目を楽しませてくれる。

(6)真壁陸二「咸臨の家」(秋のみ)★★★★

会場は咸臨丸に乗り組んだ水夫の生家。家屋内の壁を東洋・西洋の様々な技法を使った樹や海、波などをモチーフにした様々な色の絵画が彩る。床近くの開口部からの柔らかな自然光と床面を満たす水面が壁の絵画を反射させると、色彩に陰影が加わり一層豊かな表現として迫ってくる。

(7)ラックス・メディア・コレクティブ「恋の道」(新作、秋のみ)★★★★

海に通じる水路に浮かぶ折り紙で折られたような直線的な形状の船。見る角度によって色や見え方が変化するレンチキュラーという素材の船は、平安時代に詠まれた恋の短歌をモチーフに作られた。赤く燃えるような熱っぽさと同時に頼りなく波に揺れる様が恋を表現している。

(8)古郡弘「産屋から、殯屋から」(秋のみ)★★★★

森の中にぽっかりあいた空間に足を踏み入れると、てるてる坊主のような赤い人形が無数に並ぶ。その真ん中を切り裂くように、地面に沈み込むように掘られた溝の先は墓のような暗い部屋に入っていく。野外の明るい空間とろうそくに照らされた暗い地中との移動は作品タイトル通り、生と死の世界を行き来するよう。

(9)斉藤正×続・塩飽大工衆「善根湯×版築プロジェクト」(秋のみ)★★★

煙突のような高さ8メートルの塔を備えたあずまやのような建物。砂の層が積み重なったやや荒っぽい質感と柔らかなベージュの色が印象的だ。塩飽水軍で有名なこの地には優秀な船大工の歴史があり、その後も様々な形で大工として活躍したという歴史を現代に蘇らせるプロジェクト。

(10)ツェ・スーメイ「Moony Tunes」(秋のみ)★★★★

古い民家の2部屋。片方には床面に巨大な円形の大理石が埋め込まれ、もう一方には天井から赤い糸でたくさんの火山の岩が吊されている。室内には東南アジアを思わせる音楽が流れる。日本家屋と大理石の組み合わせによるちょっとした違和感からか、大理石の複雑な模様に目をこらしていると日本画、水墨画のようなイメージも浮かぶ。

(11)ピナリー・サンピタック「笠島―黒と赤の家」(新作、秋のみ)★★★

船大工の作業場だった民家。玄関先にはすだれのようなタイの花輪が飾られ、中庭には黒い大きなインスタレーション。作家のホームであるタイと日本、本島の歴史や伝統、文化が両国の工芸品や色彩を使って組み合わされている。

(12)アリシア・クヴァーデ「レボリューション/ワールドラインズ」(新作、秋のみ)★★★★

伝統的な街並みにある日本家屋。柱や梁、畳、建具、掛け軸など直線で構成された家屋に鏡が配置されている。足を踏み入れると、何倍にも広い空間に迷い込んだよう。どこが実体でどこが鏡の虚像なのか、くらくらするような感覚だ。別の部屋にはリング状の金属に地元産の石を組み合わせた彫刻が。こちらも日本家屋との素材感のミスマッチが異化効果を生み、小さな日本家屋から大きな空間やイメージの広がりを演出する。

(13)アレクサンドル・ポノマリョフ「水の下の空」(秋のみ)★★★

瀬戸大橋を望む浜辺に3隻の船を模した立体作品。海に生きる漁師や造船技術で名をはせた島の歴史を具体化した作品。鉄の骨組みに砂が吹き付けられ、船底は漁網やロープから成る。マストのように中央部を貫く柱で地面から浮かび上がっている船体は風を受けると凧のように揺れる軽さもまとい、海原にこぎ出しそうだ。

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