高見島の作品 瀬戸内国際芸術祭2019

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2019/10/3 7:00
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(1)鎌田祥平・並木文音「積みかさなる白と空白」(新作、秋のみ)★★★

船着き場近くにたたずむ真っ白な巨岩のような作品。来島者のための道しるべのようでもあり、島民にとっての聖なる岩のようでもある。トンネル状の内部をくぐって岩の向こうへと突き抜ける。それはこの島を初めて訪れる人にとって、一種のみそぎのようなものと言えるのかもしれない。高見島での瀬戸芸がここから始まる。

  

(2)中島伽耶子「時のふる家」(秋のみ)★★★★

古民家の内に入ると、暗闇の中で作品が浮かび上がる。幾何学的にカットされたアクリル板をいくつも組み合わされ、まるで宙に浮かんでいるかのようだ。それは砕け散った瞬間のガラス板のようでもあり、人間の刹那の激情を表現したようにも見て取れる。そうした難しい理屈は抜きにしても、暗闇の中で造形的な美しさと向き合うのは特異な体験のはずだ。

  

(3)PARANOID ANDERSONS「Long time no see」(新作、秋のみ)★★★

遠くから見ると巨大な植物のようだが、近づくと木材や衣服、食器、照明器具、瓦、家電製品などで構成されていることが分かる。この島の1軒の空き家を解体し、そこにあったほとんどの素材を使ってこの作品を制作したという。つまり作品が意味するのは島の暮らしの解体と再構成。海を望む見晴らしのよい空き地に位置し、不思議な詩情を醸し出している。

  

(4)大石いずみ「Keep a record」(新作、秋のみ)★★★

古民家の内へ足を踏み入れると、目にも鮮やかな白壁に何枚かの絵画が展示されている。かつての島の暮らしを想起させるような人物たちが、やや抽象的に描かれている。過去に島で流れた時間と我々が生きる現在を並列させようという試みだろうか。

  

(5)村田のぞみ「まなうらの景色」(新作、秋のみ)★★★

真っ暗な廃屋の中に細く縮れたステンレス線を張り巡らせた。それはこの廃屋に巣くった新たな生命体のようでもあり、かつてここに暮らした島民の情念であるようにも思える。ただ、廃屋をいくつも巡っては作品を鑑賞することを繰り返していると、これくらいでは驚かなくなる人も多いだろう。

  

(6)山田愛「内在するモノたちへ、」(新作、秋のみ)★★★★

またまた屋内に入ると、床一面に敷き詰められた無数の小石。それが中央で円すい状に高く盛り上がる。小石をじゃりじゃり踏みしめながら円すいの周囲を歩く。壁の円形も不穏な空気を生み出す。瀬戸芸といえば「廃屋もの」が数多いが、屋内に異世界を創造するという意味で成功例と言えるだろう。

  

(7)藤野裕美子「過日の同居」(新作、秋のみ)★★★

植物を様々にアレンジした大きな絵画が屋内の壁や空間を遮るように飾られる。窓から自然光を取り入れ、絵画の表情が刻々と変化する。島の自然や歴史を疑似的に体験したような気分になれるだろう。

  

(8)中島伽耶子「うつりかわりの家」(秋のみ)★★★★

古民家の屋根や壁に直径1センチほどの穴を無数に開け、そこにアクリル棒を差し込んでいる。等間隔に並んだ穴から自然光が差し込む。その光は時に優しげであり、時に針のように人の心を刺すようにも思えてくる。ワン・アイデアの作品ながら、これもまた「廃屋もの」の成功例と言えるだろう。

  

(9)ロサナ・リオス「家の"メメント・モリ"」(新作、秋のみ)★★★

1階には人の形を思わせる不気味な映像が投影されている。屋根裏部屋のような2階に上がると、静かな空間に切り紙状の巨大な作品がたたずんでいる。対照的な作品で、この空き家にかつて人が生きていた痕跡を表現したという。

  

(10)内田晴之・小枝繁昭「除虫菊の家/静かに過ぎてゆく」「除虫菊の家/はなのこえ・こころのいろ」(新作、秋のみ)★★★★★

かつて高見島は蚊取り線香の原料である除虫菊の栽培で大いに栄えた。この古民家の1階では、高見島の花々をカラフルな障壁画として表現している。はしごのような急勾配の階段で2階へ上がると、床一面を板状の蚊取り線香が占拠している。漂ってくる線香の香り。対照的な2つの作品によって島の歴史と風景を見事に表現している。

  

(11)野村正人「海のテラス」(新作、秋のみ)★★★

見晴らしのよい高台で営業するイタリア料理店。海を望む開放的なスペースで、和やかな島の人たちとの交流が体験できる。瀬戸芸ならでは作品と言えよう。急で狭い坂道を上り下りした疲れをここで癒やしたい。

  

(12)梶井照陰「KIRI」(新作、秋のみ)★★★

瀬戸内海の霧をテーマにした十数分間の映像作品。古民家でこのような詩情あふれる作品を鑑賞できるのも瀬戸芸ならではだろう。入れ替え制で、一度に鑑賞できる人数が限られる。行列ができる可能性が高いので、時間に余裕を持って訪れよう。

  

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