GE再建請負人に試練、「脱イメルト路線」道半ば

2019/9/13 21:00
保存
共有
印刷
その他

不正会計疑惑を受けてGEの株価は急落した(ニューヨーク証券取引所)=AP

不正会計疑惑を受けてGEの株価は急落した(ニューヨーク証券取引所)=AP

米ゼネラル・エレクトリック(GE)が初の社外出身の経営トップとして招いたラリー・カルプ最高経営責任者(CEO)がいばらの道を歩んでいる。2018年10月の就任後にリストラは進めたが、8月中旬にGEの不正会計の疑惑が浮上。株価は一時急落し、カルプ氏は火消しに追われた。名門再建はなるか。

「明らかな市場操作だ」。カルプ氏は8月15日、著名会計専門家のハリー・マルコポロス氏らがGEの保険部門の会計処理などで数十年にわたり不正を続けていると告発したのを受け、こう反論した。

マルコポロス氏が指摘した不正の総額は380億ドル(約4兆円)と巨額で、GEの株価は一時15%超とリーマン・ショック後で最大の落ち込みを示した。そんな中、カルプ氏は200万ドル分のGE株を自ら購入し、潔白を主張したのだ。

マルコポロス氏は08年、元ナスダック会長のバーナード・マドフ氏の資産運用詐欺を見抜き、米証券取引委員会(SEC)に告発したことで知られる。今回の調査リポートでは、GEが保険部門の準備金不足や石油サービス子会社の評価損などを隠しているとした。

市場の受け止めはどうか。空売り投資家のアンドリュー・レフト氏は「GEは(会計の技法で利益を最大化する)積極的な会計をしているが、不正とはいえない。同じことは企業の半分がやっている」と指摘する。マルコポロス氏が告発内容を事前に投資ファンドに伝え報酬を得ていたことも市場関係者らに内容の真偽への疑問を抱かせた。

GE株はカルプ氏の自社買いが伝わると急反発した。足元の株価は疑惑が浮上する前の水準まで戻しつつあるが、18年10月のCEO就任前と比べると2割以上低い。

カルプ氏は米機械大手ダナハー時代、CEOとして14年間で売上高と時価総額を5倍に伸ばした実績を買われた。市場の信頼を勝ち取るには至らないのが現状だ。

GEで大なたを振るってはいる。18年10月のCEO就任直後に配当を1セントに大幅減額し、生え抜きトップが手を付けられなかった電力事業を分割して、従業員も1万人削減した。さらにソフト会社を売却するなど、先々代CEOのジェフ・イメルト氏が入れ込んだデジタル部門に見切りを付け、「脱イメルト路線」を進める。

今も米ボーイング向けの新型航空機エンジンの開発が遅れるなど課題は残る。だが問題はより根底にある。かつて製造業の見本とされたGEで、組織の肥大化や派手なデジタル戦略の裏で、ものづくりの基本が失われてしまった点だ。

「小さな事例の積み重ねだが、リーンマネジメントを再徹底することでGE全体の大きな改善につながる」。カルプ氏は6月、幹部100人あまりをサウスカロライナ州の研修施設に集め、1週間かけて「リーンマネジメント」の講習を施した。リーンは「スリムで無駄が無い」などの意味で、トヨタ生産方式をベースに広がった考え方だ。

カルプ氏はダナハー時代に現場の知恵を集め業務を改革する「カイゼン」と「リーンマネジメント」を学んだ。GE全体の業務改革を担う専門部署を立ち上げ、事業部ごとに効率化を促す。

すでに医療機器事業の売り上げ請求業務を自動化し、5日かかっていた業務を1日に短縮した。電力事業ではガスタービンの部品管理を見直し生産ラインの部品の在庫を95%削減した。

市場関係者から正直者を意味する「ボーイスカウト」とも呼ばれるカルプ氏は4年契約でCEOに就いた。報酬の9割は成果反映型で、就任時の株価を50%上回るごとに株式報酬が得られる。株価は低迷するが同氏の自信の裏付けともとれる。

「我々は率直さと透明性、謙虚さを実践していく。企業文化は変わりつつある」。カルプ氏は19年中にリストラにめどをつけ、20年からの反転攻勢に出る構え。もっとも今回の不正会計疑惑を乗り切れても本業再建の即効薬は見当たらない。意識改革を急ぐ中で株価はさえない。市場とのせめぎ合いが続く。

(ニューヨーク=中山修志)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]