山形・天童温泉に屋台村 夕食不要のビジネス・外国人誘客も

2019/9/13 19:26
保存
共有
印刷
その他

山形県天童市の天童温泉に2020年1月、屋台村がオープンする。地元の旅館関係者が建設・運営するもので、温泉街にできるのは珍しい。人手不足のなか、夕食を外で食べてもらう訪日外国人やビジネス客といった新たな客層を開拓する。人手をかけずに稼働率を高める効果も期待でき、地域の活性化と一石二鳥の取り組みとして注目されそうだ。

将棋にちなむデザインや名称にした天童温泉屋台村「と横丁」(完成イメージ)

「カランコロンと響くにぎやかなゲタの音を復活させたい」。地元の有力旅館、天童ホテルの押野茂社長は屋台村に温泉街復活をかける。県内有数の温泉街で1995年には130万人の観光客が訪れたが、2016年には69万人まで落ち込んでいた。

県内を中心とした宴会宿泊客の減少が主な要因で、「県全体の観光客は(16年度に)過去最高を更新しているのに、なんとかしないといけない」と危機感を持った押野社長らが注目したのが屋台村だ。空き地に複数の小さな店を作り、トイレなどを共同利用する屋台村は青森県八戸市などが代表事例。山形県内でも酒田市などに広がっている。

このほど着工した「天童温泉屋台村 と横丁」は天童ホテルが自社の駐車場に建設し、旅館の若手経営者らでつくる観光振興会社、DMC天童温泉が運営する。6100万円の総事業費のうち3700万円は国の補助を受けた。月額10万円強と手ごろな家賃で、8店の出店者を募る。出店者が本格的な店を周辺に出せば、街のにぎわいにもつながる。

ただ、旅館は1泊2食が中心。宿泊客の来店は限定されそうだが、期待するのは新たな客層だ。訪日客の中には街中で食事をしたい人も多く、屋台村なら隣に座った住民との交流もうまれやすい。近隣の銀山温泉(尾花沢市)のような歴史を感じさせる街並みがなくても、誘客につながる可能性がある。

さらに、1泊朝食付きプランで工業団地などを訪れるビジネス客も期待する。「人手不足で夕食の提供には制約があるなか、平日の稼働率を経費を抑えながら高めることができる」(押野社長)とみている。

福井県の代表的な観光地、あわら温泉では地元有志が2007年に屋台村を開業、年間8万人が訪れる人気スポットになっている。町おこしが狙いだったが、楽天トラベルの男性ひとり旅ランキングで全国1位となり、JRが屋台村で夕食をとる食事券付き宿泊プランを企画するなど、「新たな需要の開拓につながっている」(運営責任者で藤田かまぼこ店の藤田忠社長)という。

天童温泉ではDMCが「朝摘みさくらんぼツアー」を企画するなど、若手経営者が集客につながる活動を地域ぐるみで始めている。屋台村は多言語化や電子決済システムなどを取り入れるなど先進機能を盛り込む。

東大卒の獣医師という異色の経歴からUターンした40歳の押野社長は、「元気な温泉街にして自分の子どもにも継いで欲しい」と語る。

(山形支局長 浅山章)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]