財政ルール緩和 議論着手 EU 景気不安で運営柔軟に
反対論も

2019/9/13 19:00
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【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は加盟各国を縛る財政ルールを緩和する検討に着手する。米中貿易戦争などのあおりを受けて欧州経済が減速するなか、柔軟な財政出動の余地を認め、成長を下支えする構想だ。実現すれば厳格な財政規律を堅持してきた姿勢からの転換となる。だが北部欧州を中心にルールの緩和は財政規律の緩みにつながりかねないと反対論も根強い。実現には曲折がありそうだ。

イタリアのコンテ首相(左)はEU財政ルールの改革を求めた(11日、ブリュッセル)=ロイター

13~14日にヘルシンキで開く財務相会合で議論を始める。EU議長国のフィンランドは会合前に議論のポイントを提示した文書で、従来のEU財政ルールが「健全で持続可能な財政を守るのが唯一の目的だった」とした一方で「数カ国が財政政策の役割は経済の安定にもあると提起した」と説明した。財政規律にこだわるあまり、景気を犠牲にすべきではないとの主張だ。

北欧のフィンランドは財政規律の維持に厳格なEU加盟国のひとつ。それでもこの問題を取り上げるのは、足元で欧州景気が減速感を強めているためだ。ユーロ圏経済は4~6月期の実質成長率が前期比0.8%増(年率換算)と前期(1.7%増)から減速。とりわけけん引役のドイツは0.3%減で7~9月期もマイナス成長になるとの見方がある。

このまま手をこまねいていては、域内が景気後退に陥ることになりかねない。2010年前後の欧州債務危機では財政健全化を重視しすぎて、景気回復が遅れたとの批判もあった。

金融政策の余地が一段と狭まっていることもあり、財政で景気を下支えすべきだとの声は広がっている。12日に3年半ぶりの金融緩和を決めた欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁も「財政余力のある国は(財政出動に)動くべきだ」とドイツなどを念頭に対応を呼び掛けた。

「債務は減らすが、経済成長をしながらだ」。11日、EU本部を訪れたイタリアのコンテ首相はユンケル欧州委員長やフォンデアライエン次期委員長らに財政ルールの改革を訴えた。グリーン経済やデジタル分野への投資を通じて経済を活性化させる考えだ。

ユーロ圏3位の同国は19年通年でゼロ前後の成長になる見通し。今のEU財政ルールを守っていては成長は見込めず、コンテ氏は機動的な財政出動が必要との立場だ。

財務相会合の議論の土台として、EUの欧州委員会の諮問機関である欧州財政委員会は11日、財政ルールを検証した報告書を公表した。

EUの「安定・成長協定」は各国に財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以下、債務残高を同60%に抑えるよう定めているが、報告書は財政赤字の目標をやめた上で公的債務の上限に絞るように提言。さらに毎年ではなく景気サイクルに合わせて適用するよう求めた。経済危機下でも各国に財政拡大の余地を残す狙いがあるようだ。

さらに財政ルールに違反した国に制裁金を科す現行の仕組みは「政治的に発動は難しい」としたうえで、一定の基準を満たせばEUの基金を使えるようにするなどのインセンティブ型に改めるよう求めた。

フォンデアライエン氏は加盟国の財政の監視などを担当する欧州委員の候補にルール改革を求めてきたイタリア前首相のジェンティローニ氏を指名した。財政規律一辺倒ではない姿勢を示したと受け取る向きもある。

欧州委は年末までに結論を得る考えだが、議論は紛糾しそうだ。厳格な財政規律を重視するオランダなどを筆頭に反対論があるためだ。ルール緩和が実現すれば、恩恵を受けるのは主に南欧諸国で「市場は財政指標の悪化を売り材料にする可能性は十分ある」(欧州系証券)との声もあがる。各国の意見集約は長引く恐れもある。

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