諫早訴訟、さらに長期化 国は関係者の協議促進を

2019/9/13 18:14
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諫早湾干拓事業を巡る訴訟で、「破棄差し戻し」の垂れ幕を掲げる漁業者側(13日、最高裁前)

諫早湾干拓事業を巡る訴訟で、「破棄差し戻し」の垂れ幕を掲げる漁業者側(13日、最高裁前)

諫早湾干拓事業で開門を命じた2010年の福岡高裁の確定判決を巡る訴訟で、最高裁が審理を差し戻し、改めて裁判が続くことになった。ただ長期にわたり事態が膠着する中、法廷闘争だけでは問題の最終解決につながらないとの声もある。国は打開に向け、当事者の協議が進むような環境整備を求められる。

13日の判決後に記者会見した漁業者側弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は最高裁について「良識ある判断を示してくれた。漁業権以外の論点もしっかり訴えて戦っていきたい」と強調した。下級審では別の漁業者らによる開門訴訟も係属しており、開門の是非を巡る裁判はなお続く見通しだ。

もっとも、排水門閉め切りから20年以上が過ぎ、度重なる訴訟を経ても対立が解けない現状に、地元は疲弊の色を深めている。営農者でつくる平成諫早湾干拓土地改良区の山開(やまびらき)博俊理事長(71)は「最近は『開門しない』という司法判断が続いただけに、決着がつくものと期待していた。差し戻しは正直残念」と漏らし「どっちつかずの状況が続くのはつらい。いつになったら安心して農業ができるのか」と訴えた。

国は16年に「開門しない前提で100億円規模の漁業振興基金を設ける」との和解案を示した。だが「非開門」の前提に漁業者側は猛反発し、物別れにおわった。現在、司法の場以外に国や漁業者、営農者ら関係者が継続的に協議する機会はないのが実情だ。

干拓事業は戦後の食糧難に端を発し、当初はコメ作りが目的とされた。ところがその後減反政策に転じたことなどから、事業の目的も防災や畑作農地確保に変更された。公共事業の継続自体が目的だったのではないかとの見方もあり、地元では国への不信感も根強い。

漁業者側弁護団は13日の会見場に「農漁共存の和解を!」と書かれた垂れ幕を掲げ、「国会や行政機関も社会的紛争解決のために尽力すべきである」との声明を出した。馬奈木氏は「漁業者、営農者全員が納得できるような結論を話し合うべきだ」と述べ、判決での決着だけでなく、関係者間の協議による解決を目指す考えも示した。

国は複雑に絡まった事態の打開に向け、当事者による議論が実質的に進むような環境整備を改めて求められている。

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