台風被害、東電・JRが陥った「楽観主義バイアス」

2019/9/13 18:01 (2019/9/14 8:26更新)
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関東を直撃した台風15号は長期間にわたる大規模停電や鉄道の運休など各地に甚大な被害をもたらした。各インフラ事業者は被害が想定を大きく上回ったとして、当初発表した復旧時期の見通しを再三先延ばしにしたことで混乱に拍車がかかった。専門家は早期復旧への期待が高まる中で事業者側が「楽観主義バイアス」に陥った可能性を指摘している。

9日に千葉県に上陸した台風15号は記録的暴風を伴って北上した。東京電力パワーグリッド管内では東日本大震災以降で最大規模となる約93万戸で停電が発生した。

当初発表した復旧見通しを再三先延ばしにしたことで混乱に拍車がかかった(記者会見する東京電力の担当者ら、東京都千代田区)

当初発表した復旧見通しを再三先延ばしにしたことで混乱に拍車がかかった(記者会見する東京電力の担当者ら、東京都千代田区)

同社は10日の時点で、停電は11日朝までに約12万戸に縮小し「11日中に全面復旧する」との見通しを発表した。だが11日になり千葉市などの復旧は12日中で、全面復旧は「13日以降」と修正。さらに13日夜には「今後、2週間以内におおむね復旧見込み」と改めた。

同社の塩川和幸技監は13日夜の記者会見で「経験したことのない規模で倒木や設備損壊が発生した。台風の規模が今まで以上に大きかったことを考慮せず、過小な想定をしてしまった」などと釈明した。

昨年9月に関西地方を襲った台風21号では延べ220万戸が停電したが、関西電力の停電情報システムが閲覧できなくなり、復旧時間の見通しを示せず混乱が生じた。被害の把握にも手間取り、停電の全面復旧まで2週間以上かかった。

これを教訓に各電力会社は停電の早期復旧と迅速な情報発信などの対策を進めたが、今回は甘い見通しを迅速に発信してしまった。地元自治体からは「楽観的な見通しの発表は被災者のためにはならない」「見通しとかけ離れたことは大変遺憾」との厳しい意見が上がった。

運転が再開された後も入場規制が行われ、JR三鷹駅の外まであふれた人たち(9日午前、東京都三鷹市)=共同

運転が再開された後も入場規制が行われ、JR三鷹駅の外まであふれた人たち(9日午前、東京都三鷹市)=共同

一方、台風の接近に伴いJR東日本は8日夕、首都圏の全在来線で9日の始発から午前8時ごろまで運転を見合わせると発表した。しかし多くの路線で午前8時に運行を再開できず、集まった乗客で駅はごった返した。結局、山手線の再開は午前10時すぎだった。

事業者側の見通しと実態のズレの背景について、東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「楽観主義バイアス」と呼ばれる心理現象があると指摘する。楽観主義バイアスとは物事を自分に都合良く解釈してしまうことを指し、自己防衛反応として人間に本来備わっているという。

広瀬氏は東電について「実際には詳細な状況が把握できていない段階で被害を過小評価し、楽観的な見通しを乱発してしまった」と分析する。福島第1原子力発電所事故後の対応とも共通するとし「早期復旧を望む利用者に応えたいという思いも無意識に働いたのでは」とみている。

明治大の市川宏雄名誉教授(危機管理)は「事業者ばかりを責められない。日本の災害対応が優れているが故に、すぐに復旧すると思っている国民が多いことも一因だ」と指摘する一方で「災害の被害全容を把握するのに時間がかかるのは当然。きちんと調べたうえで、その状況を丁寧に説明するなど、事業者側が情報発信の内容を工夫することが求められる」と話している。

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