中国の家電各社が高精細映像の「8K」に対応したテレビに本腰を入れ始めた。海爾集団(ハイアール)は年内に中国で発売し、2020年にも欧州などで投入する。テレビ市場をけん引してきた中国勢の参入で8Kの販売が増えそうだ。ただカギを握る8K放送は緒に就いたばかり。コンテンツ不在のなか、普及には時間がかかる。
11日まで独ベルリンで開催していた欧州最大の家電見本市「IFA」。かつて家電の王様と言われたテレビは8K製品が目白押しとなった。
日本の業界団体、電子情報技術産業協会(JEITA)の試算によると、23年に8Kテレビの世界市場は826万台と18年(2.8万台)から増える。薄型テレビは日本や韓国勢が先行し、中国勢が本格参入することで普及してきた。欧州の見本市で中国勢が8Kシフトを鮮明にしたことで認知度が高まりそうだ。
中国のTCL集団は独見本市で、量子ドットを活用した「QLED」の8Kテレビを来年発売すると表明した。量子ドットはナノレベルの半導体結晶に光を通すことで鮮やかな色彩を表現できる。サイズは85、75、65インチでメインのディスプレーとは別に小さな画面が配置され、観賞中の映画の情報もチェックできる。
ハイアールは75インチの8Kテレビを展示。年内に中国で発売し、20年以降、欧州などにも広げる。海信集団(ハイセンス)は液晶パネルを2枚組み合わせることで高いコントラストと深い奥行きを表現し、20年にも欧州で売る。
ただ世界の薄型テレビ市場(18年で約2億4300万台)に占める8Kテレビの比率は1%未満で、23年でさえ3%にとどまる見通しだ。4割弱(18年、9000万台超)まで上昇した4Kテレビに比べて低い。
問題は8Kで観賞できるコンテンツの不足だ。NHKによると、日本ではNHKが18年に8K放送を始めたが海外はまだ例がないという。韓国サムスン電子の欧州法人でテレビを担当するネイサン・シェフィールド氏は「テレビを通じた体験を向上させるにはパートナーシップが欠かせない」と話し、コンテンツで他社との協業を模索する。
世界で8Kテレビを初めて発売したシャープは、8K対応の小型ビデオカメラやパソコンなどをIFAでお披露目した。撮影、編集まで手がけられる製品を動画配信会社などに売り込み、自ら8K市場の裾野を広げようとしている。
4Kテレビは、米ネットフリックスなどが動画を作ったことで販売が伸びた。ただネットフリックスは「8Kは現時点で展開する予定はない」という。8Kテレビをお披露目した家電会社からは「作れる技術があることだけは今のうちにアピールする」(中国・康佳集団)との声も漏れる。コンテンツという真のけん引役が不在のなか、家電メーカーもなお手探りなのかもしれない。(川井洋平、志賀優一、広州=川上尚志)