初の司法取引、元取締役に有罪 三菱日立パワー贈賄事件

2019/9/13 13:16
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捜査協力の見返りに刑事処分を減免する日本版「司法取引」が初適用されたタイの発電所建設を巡る贈賄事件で、東京地裁は13日、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の罪に問われた三菱日立パワーシステムズ(MHPS)元取締役、内田聡被告(65)に懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。

事件では内田被告のほか元執行役員(63)と元部長(57)=いずれも有罪判決が確定=の3人が在宅起訴された。内田被告だけが「贈賄を了承していない」と無罪を主張したが、判決理由で吉崎佳弥裁判長は「(内田被告に)現金供与の実質的な決定権があり、会議で了承した」と認定した。

2018年6月施行の改正刑事訴訟法で導入された司法取引で初めて罪に問われた3人全員に有罪判決が出たことになる。

判決によると、内田被告は元執行役員と元部長と共謀し、15年2月、タイでの火力発電所建設工事に関して港湾当局の現地公務員に約3900万円相当の現地通貨バーツを支払った。

内田被告は「代替策の検討を指示しており、了承していない」と主張し、「内田被告が贈賄を容認した」とする元執行役員らの供述は信用できないと訴えた。ただ判決は内田被告が「会議で賄賂は不要との考えを話題にしていない」などと指摘し、「弁解内容には(了承したとの)認定を覆すものはない」と退けた。

司法取引は協議・合意制度と呼ばれ、他人の犯罪を明らかにすれば、見返りに不起訴にしたり求刑を軽くしたりする。MHPSの事件のほか、日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告(65)の事件でも使われた。適用例は2件にとどまるもようで、検察当局の慎重な運用が続いている。

MHPSは証拠約80点を提出し、聴取や証言が必要な関係者の出頭も約束した見返りに、法人としての起訴を免れる内容で東京地検と合意した。

司法取引は、組織的な不正などを告発した個人を免責するイメージで説明されることが多かっただけに「会社を免責し、個人の責任だけを問う」という合意内容には「とかげのしっぽ切り」「会社が個人を売った」との批判や戸惑いも招いた。

元東京高裁部総括判事の門野博弁護士は「公判では会社が司法取引した経緯や、会社と有罪になった3人との関係性などを知る機会がなく、公正に運用されたか判断が難しい面があった」と指摘。司法取引は、無関係な人物が罪に問われる冤罪(えんざい)の危険性も指摘されており、「制度を検証できる仕組み作りが必要だ」と話した。

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