グーグル、1150億円支払いで仏と和解 課税逃れ問題

【パリ=白石透冴】米グーグルは12日、フランスで疑われていた課税逃れを巡り、罰金など9億6500万ユーロ(約1150億円)を支払うことで仏国税当局と和解した。仏メディアが報じた。法人税率が低いアイルランドに欧州本社の機能を置いて課税を免れたなどとして仏当局が2015年から捜査していた。グーグルなど米IT(情報技術)大手が課税逃れしているとの批判が強まっており、各国当局は今後も監視を強めそうだ。
支払いの内訳は罰金5億ユーロ、税金4億6500万ユーロ。グーグルは「数年続いていたフランスでの見解の違いに終止符を打った」などとの声明を出した。有罪を認めることなく起訴を免れる仕組みで、原則捜査は終わることになる。
仏当局は16年にはグーグルのパリ拠点を家宅捜索していた。同社は長引けば企業イメージの悪化につながるとみて、和解を選んだもようだ。
欧州委員会はこれまでも米IT企業の課税逃れに対し、厳しい姿勢で臨んできた。16年には米アップルが不公正な税制優遇を受けていたとしてアイルランド政府に追徴課税するように要請。18年9月にアイルランド政府は、アップルが追徴課税分と利息を含め総額143億ユーロ(約1.9兆円)を支払ったと明かした。
グーグル、アップルなど米IT企業は利益の大部分を、低税率国やタックスヘイブン(租税回避地)にとどめ、実際に利益を上げている消費者のいる国々で十分な税負担をしていないと批判されてきた。
20カ国・地域(G20)と経済協力開発機構(OECD)はデジタル課税の導入で20年までの合意を目指している。フランスは当初合意を待つ考えだったが、単独での課税に踏み切ることに方針転換した。
米トランプ政権は米IT大手を狙い撃ちにした課税だと反発し、フランス政府と協議を続けている。今回の和解について専門家の間では「米グーグルは支払いに応じ、仏当局は米国を刺激しない程度の金額にとどめることで双方妥協した」(国際税務に詳しい弁護士)との見方が出ている。