ヤフー、国内EC「万年3位」返上へ ZOZO買収

ヤフー、ZOZO買収
2019/9/13 0:00
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記者会見で握手する(右から)ZOZO創業者の前沢氏、沢田社長、ヤフーの川辺社長(12日、東京都目黒区)

記者会見で握手する(右から)ZOZO創業者の前沢氏、沢田社長、ヤフーの川辺社長(12日、東京都目黒区)

ソフトバンク傘下のヤフーは衣料品通販サイト首位のZOZOの買収を通じ、ネット広告への収益依存からの転換を図る。若者に人気のあるZOZOを取り込み、ネット通販を第2の柱に育てる。ソフトバンクグループ本体が構造転換を主導し、人工知能(AI)の知見も注ぎ込む。グループの総力を挙げ、日本国内の米アマゾン・ドット・コムや楽天に次ぐ「万年ネット通販3位」の座の返上を狙う。

【記者会見詳報】
(1)ヤフー社長「広告とEC、収益の2本柱に」
(2)前沢氏「宇宙に行きたい」
(3)前沢氏「社長退任、悩みまくった」
(4)前沢氏「退任決断は9月に入ってから」

12日に都内で記者会見したヤフーの川辺健太郎社長は「ヤフーは広告が中心だが、電子商取引(EC)をもう一つの柱にしたい。むしろECを(成長の)けん引役にしたい」と述べた。ZOZO買収に投じる資金は最大で4007億円。自己資金と借り入れで賄う。

ヤフーは広告への収益依存度が高い。広告収入が中心のメディア事業の2019年3月期の営業利益は1410億円で、EC事業の2.5倍もある。ECでの巨額買収の狙いの一つは顧客の若返りだ。ヤフーは1996年に生まれた国内ネットサービスの先駆け。今も多くの利用者を抱え利用者は30~40代が中心だ。路線検索などは若者も利用するが、アマゾン、楽天より高齢化している。

一方、ZOZOの約800万人の顧客の大部分は20~30代だ。通販サイトにZOZOが出店して衣料品を販売すれば、顧客の若返りが見込める。

ヤフーにとって、ZOZOの2つめの魅力は収益性だ。ECは自社で直接販売する直営型と、外部企業が出店して販売する「ショッピングモール型」がある。アマゾンは直販とモールを組み合わせるのに対し、ヤフーはモール型で展開する。同じモール型でもZOZOの売上高営業利益率は22%とヤフーより高い。ECを新たな収益源として見込める。

12日の会見で川辺社長は「顧客のプライバシー保護を尊重しながら可能ならば顧客データをグループで利活用し、ユーザーの便益に変えたい」と述べた。ヤフーのECサイトの利用者は男性が6割なのに対し、ZOZOは女性が7割。グループで購買データを共有できれば、AIを使った商品提案などで利点が多い。

これにヤフーとソフトバンクが18年10月から始めたスマートフォン決済「ペイペイ」も加わる。実店舗の購買データも手にし利用者の買い物の傾向がつかめれば、好みに合う商品や店舗を提案できる。

記者会見には、以前から前沢氏と交流があるソフトバンクGの孫正義会長兼社長が「特別ゲスト」として登壇。「『新しい人生を過ごしたい』と前沢君から相談を受けた」と話した。そこでヤフーとの提携を勧めたという。ヤフーの改革を主導するのはソフトバンクG本体だ。

「ネットの世界ではシェア1位が大事ということ」との哲学を持つソフトバンクGと孫氏。孫氏はヤフーが国内ECの3位が続く状況にいらだちを募らせていたとされる。メルカリといった新興勢も台頭し競争環境も変わってきた。

スマホ決済については川辺社長などヤフー側は当初、自社だけの展開を望んだが、孫氏が容認しなかったという。今春にはソフトバンクG本体もペイペイに出資した。出資の発表は5月で、通信子会社ソフトバンクによるヤフーの子会社化と同じタイミングだった。

アスクルなど個性的なサイトを傘下に収めていたヤフーは今回ZOZOを買収する。ソフトバンクGは一段のヤフーてこ入れにグループ総力を挙げる。

ただ他のネットサービス大手も新興企業などの買収で顧客データの囲い込みに動く。楽天は今年5月、ぐるなびの筆頭株主になると発表した。多様な顧客データをいかにして取得するか。各社はしのぎを削ることになる。

■前沢氏「ワンマン経営を転換」

ZOZOの創業者である前沢友作氏が創業から約20年間、育ててきた衣料品通販サイト「ゾゾタウン」の売却を決めた。「世界アパレルのトップ10」を目指したが、話題を集めた採寸用スーツの苦戦や有力ブランドの撤退が相次ぐなか、ZOZOの経営の一線から退く。ZOZOは前沢氏のワンマン経営から、集団指導体制に移行する。

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前沢氏は12日の記者会見で「僕の経営は感性に基づく。それが失敗したこともあって反省している」と述べた。ZOZOはより安定的な経営を進めるため、データの分析や検証を重視し「総合力やチームワークが問われている」として、ワンマン体制からの転換点にあると説明した。

前沢氏は2018年9月、23年に月の周回旅行に参加すると表明していた。会見でも「宇宙に行きたい。順調に準備をしている」と話した。

前沢氏は高額な現代絵画の購入などでも話題を振りまいてきた。大量保有報告書によると、保有するZOZO株の多くを銀行に担保として差し出している。ZOZO株が下落すれば追加の担保提供や、担保の処分を迫られるのではないかとの懸念も生じていた。前沢氏は「(今回の)提携には借金は関係ない。強く違う」と否定した。

前沢氏は元バンドマンで1998年にZOZOの前身となるスタートトゥデイを創業し、「ゾゾタウン」を開設した。ファッションに関心の高い若者の支持を集めてきた。

近年は誤算もあった。18年1月、採寸用スーツ「ゾゾスーツ」を使ったプライベートブランド(PB)に着手したが不発に終わった。18年12月に始めた会員向けの割引サービスでもブランドの毀損をきらった大手アパレルの離反を招いた。アパレル企業の幹部には「市場縮小が続く業界にあって話題を提供して盛り上げてくれた」と評価する声もある。

英文は「Nikkei Asian Review」のサイト(https://s.nikkei.com/2UMPPB1)に掲載しています。
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