10月にカナダ総選挙 環境、移民巡り与野党伯仲

政治
2019/9/12 18:26
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【ニューヨーク=中山修志】カナダ下院(定数338)は11日に解散し、10月21日の投票日まで約6週間の総選挙が事実上始まった。選挙戦は中道左派の与党・自由党と中道右派の最大野党・保守党を軸に展開する見通し。続投をめざすジャスティン・トルドー首相(47)には司法介入の疑惑が持ち上がるが、両党の支持率は伯仲している。仮に政権交代となれば、環境、移民政策が大きく変わる可能性がある。

最大の争点は環境対策だ。カナダで連邦を構成する州の多くは温暖化ガスの排出を抑制する税制などを以前から導入してきた。トルドー政権は4月以降、対策が遅れる東部オンタリオ州など4州に排出量に応じて課税する「連邦炭素税」を新たに実施してきた。一方、保守党は企業や国民の負担が重いとして連邦炭素税の撤廃を主張する。

移民受け入れを巡っても、積極的な拡大を目指す自由党に対し、保守党は現状維持の方針を示している。隣国の米国がトランプ大統領の下で移民の受け入れを制限していることからカナダはハイテク産業などで働く高度な技術を持つ移民の受け皿となっている。だがバンクーバーなど一部の都市では移民の流入が不動産価格の高騰につながっているとの批判がある。

「やるべき仕事が山のようにある」。トルドー氏は11日、オタワで記者団に対し、首相続投への意欲を語った。一方、保守党のアンドリュー・シーア党首(40)は「国を治める道徳的権限を失った」と、倫理面からトルドー氏を糾弾している。

カナダ下院サイトによると、解散前勢力は自由党が177議席で単独過半数を占めた。保守党は95議席で第2党だった。

トルドー氏は父が元首相で、子供のころから多くの国民に知られていた。2015年の前回総選挙で地滑り的な勝利を収め、政権交代を実現させた。環太平洋経済連携協定(TPP)を締結するなど自由貿易体制を推進し、内政では財政出動による大規模なインフラ整備などに取り組んだ。

ところが2月、地元ケベック州の大手企業の贈賄事件を巡り、刑事訴追を控えるようトルドー氏が司法当局に圧力をかけたとの疑いが浮上し、清新なイメージが大きく崩れた。トルドー氏は司法介入を全面否定したが、連邦倫理委員会は8月、司法当局への同氏の圧力があったと結論づけた。

カナダの世論調査会社レジェ・マーケティングによると、このスキャンダルで40%近くあった自由党の支持率は一時20%台に急落した。直近9月の調査では34%まで持ち直したが、35%の保守党と拮抗している。

カナダ経済は農産品や工業品の輸出などで米国への依存度が高く、トランプ米政権との関係も選挙戦のテーマになる。

トルドー氏は就任当初、トランプ氏との関係が良好だったが、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定からの米国の離脱を巡って対立してきた。

18年にカナダで開いた主要7カ国首脳会議(G7サミット)では米国の関税引き上げを批判し、怒ったトランプ氏は閉会後に「首脳宣言を承認しない」と表明した。

対中関係も重要だ。トルドー氏は対米依存から脱するため中国との通商協定締結をめざす。しかし、米国の要請を受けて18年12月にカナダ当局が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)幹部を逮捕して以降、中国との関係は一気に悪化した。この幹部の身柄引き渡しを求める米国と、解放を求める中国との間で板挟みになっている。

中国当局はカナダ人の元外交官ら2人を拘束し、同国からの菜種や食肉の輸入も禁じた。保守党は中国への対応が甘いとトルドー政権を批判し、「対中関係をリセットすべきだ」と主張する。

総選挙で保守党への政権交代が実現すれば、カナダ政治は右に振れ、対中政策はトランプ米政権の強硬策に近づく可能性がある。現状で自由、保守の両党がいずれも単独過半数を確保できないと予測する現地メディアもある。結果次第では連立協議が必要となり、小政党がカナダ政治の行方を左右するかもしれない。

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