米、首脳会談へイランに秋波 制裁緩和を否定せず

イラン緊迫
2019/9/12 19:30
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【ワシントン=中村亮、ドバイ=岐部秀光】トランプ米大統領が首脳会談の実現に向けイランに秋波を送っている。11日には経済制裁の緩和に応じる可能性を否定せず、体制転換も求めない考えを強調した。強硬派のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の解任でイランとの対話にカジを切りやすくなっている。イランは対話の条件として制裁解除を要求しており米国との隔たりは依然大きい。関係改善に向かうかは見通せない。

11日、トランプ米大統領はイランに体制転換を求めない考えを強調した(ワシントン)=AP

11日、トランプ米大統領はイランに体制転換を求めない考えを強調した(ワシントン)=AP

「我々は取引成立を望んでいる」。トランプ氏は11日、ホワイトハウスで記者団に対し、イランとの対話に向け改めて意欲を示した。イランに対する経済制裁の緩和についても「どうなるか見てみよう」と指摘し、可能性を否定しなかった。

国務省のイラン担当特別代表ブライアン・フック氏は4日に「最大の圧力戦略を継続する」と断言したばかりだ。トランプ政権は、制裁を通じてイラン経済に打撃を与え、譲歩を引き出す戦略を一貫して進めてきた。制裁緩和を否定しないトランプ氏の発言はイランに対する姿勢を軟化させつつあることをうかがわせる。

伏線にはボルトン氏の解任がある。ブルームバーグ通信によると、9日に大統領執務室でイラン制裁の緩和策を議論した。9月下旬の国連総会に合わせて、イランのロウハニ大統領にマクロン仏大統領を交えた3カ国で会談する案もあがった。

しかし、筋金入りのイラン強硬派であるボルトン氏は対話路線への転換に猛反発した。その後にトランプ氏がボルトン氏の解任を決めたという。ポンペオ国務長官やエスパー国防長官はボルトン氏ほどの強硬派ではなく、イランとの対話に向けた態勢は構築されつつある。

イランのロウハニ大統領は11日、「(ボルトン氏のような)戦争屋は国民に受けないことを米国は知るべきだ」と述べ、解任を歓迎した。

ロウハニ師は同日、フランスのマクロン大統領と電話し「米国の制裁が解除されるなら、P5プラス1(国連安全保障理事会の常任理事国とドイツ)との協議に参加する」と述べ、米国との対話に含みを持たせた。ウラン濃縮レベルの引き上げなど、米国に対抗して停止したイラン核合意の義務についても「元に戻す用意がある」と指摘した。

しかし、ロウハニ師がトランプ氏と会うためにはイラン最高指導者ハメネイ師の承認が必要だ。ハメネイ師は、米国が制裁をすべて解除するのが先決と主張する。「米国との対話は毒」と強調するハメネイ師のトランプ氏への不信感は根深い。

米政権は2018年5月にイラン核合意を破棄した。イラン産原油の禁輸など厳しい制裁を相次いで復活し、導入した。米国がこうした制裁を一気に解除するのは現実的ではない。

トランプ氏は制裁緩和の可能性に含みを持たせたが、対価となる見返りについては触れていない。元国務省高官のマイケル・シン氏は、イランがミサイル開発制限や米国人の人質解放などイラン核合意に含まれなかった項目での交渉開始を確約することが条件だとの見方を示す。仮に米国が無条件で制裁緩和に応じても象徴的な意味合いが大きく、イランが求める経済浮揚にはつながらない可能性が高い。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・アルターマン上級副所長は、首脳会談の可能性が高まるほど、双方が交渉力を高めようとして逆に強硬措置に出やすくなるとみる。米国がイランのウラン濃縮への非難を強めたり、イランがホルムズ海峡でタンカーをさらに拿捕(だほ)したりする事態が想定されるという。イランとの対話には米国と連携するイスラエルが警戒を強めている。首脳会談の実現にはまだ曲折がありそうだ。

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