2019年9月15日(日)

文政権、検察との対立激化 進む疑惑捜査をけん制

朝鮮半島
2019/9/12 11:17
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曺国氏(左)に法相の任命状を渡す文在寅大統領(9日、ソウル)=韓国大統領府提供

曺国氏(左)に法相の任命状を渡す文在寅大統領(9日、ソウル)=韓国大統領府提供

【ソウル=恩地洋介】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権で、家族の疑惑を抱えて就任した曺国(チョ・グク)新法相と検察の対立が激しさを増している。娘の大学院不正入学に絡み、証拠隠滅の疑惑が浮上した妻への捜査を進める検察に対し、曺氏は組織改革を急ぐよう相次ぎ指示を出した。重要公約の検察改革への文氏の思い入れは強いが、失敗すれば返り血を浴びる危険もはらんでいる。

韓国の法相強行なぜ カギは静かな市民団体と検察改革

12日から旧盆の連休に入った韓国だが、検察は尹錫悦(ユン・ソギョル)検察総長の指示の下、休み返上で捜査を進める方針だ。目下の照準は、曺氏の娘の大学院進学に関わる疑惑。曺氏の妻が娘のために、名門として知られる釜山大学の医学部大学院の進学に有利となるように表彰状などの書類を偽造し、証拠隠しをはかったとされる。11日には妻が教授を務める大学の研究室から、パソコンの運び出しや自宅のパソコンのハードディスク交換を手助けした疑いのある人物を聴取した。

検察は6日、妻を私文書偽造の罪で在宅起訴しており、この裁判は月内にも始まる可能性がある。家族の不透明な資金運用が取り沙汰される私募ファンドを巡っては、投資会社代表の逮捕令状を請求したが、ソウル中央地裁は11日にこれを棄却した。

曺氏も捜査と競うかのように改革を急ぐ姿勢を見せている。9日の就任当日には法務省内に検察改革を進める「改革推進チーム」を設置するよう指示し、革新系弁護士団体の出身である人権局長をトップに据えた。11日には検察を監査する組織の強化や、空席となっている監察本部長の任命手続きを急ぐ方針を示し、検察側へのけん制を強めた。

疑惑を押して法相に就いた曺氏の使命は、検察改革の一点だ。文大統領は9日の就任式で「国民を挫折させる既得権と不合理の源泉である制度まで改革していく」と検察制度改革への強い意思を表明した。弁護士出身の文氏は自伝で、検察を「政治検察」と呼び、政治的中立をはかることの必要性を説いたこともある。

あらゆる事件の捜査権を独占する韓国検察の権力は絶大だ。1980年代の民主化運動を原点とする文氏ら革新系はとりわけ、軍事政権下で学生運動の弾圧に手を貸した検察組織にメスを入れることを悲願としている。

歴代の韓国大統領の大半は退任後に自身や親族に絡む何らかの罪が問われ、投獄されるなど厳しい余生を強いられている。文氏の政治の師である盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は検察改革に手をつけようとしたが失敗し、退任後には保守系の李明博(イ・ミョンバク)政権下で不正資金を巡る検察の追及を受け自殺した。強大な検察の権限が維持されれば文氏とて将来、そうした運命から逃れられる保証はない。

韓国国民がこうした検察の改革に一定の期待を寄せているのは確かだ。2017年に韓国ギャラップが国内の各種機関に対する国民の信頼度を調査した結果によると、最下位の「国会」に続いて「検察」と「大企業」がワースト2位だった。検察をむしろ不正と腐敗の温床である既得権益層の象徴とみる向きもある。

もっとも、文氏の側近である曺氏を巡るスキャンダルは、清廉さを売り物にしてきた文政権のイメージに大きな打撃を与えた。今後の疑惑捜査が曺氏自身に及んだり、新事実が判明したりする展開に至れば国民の政権への不信感は一気に高まる。文政権の評価が問われる20年4月の総選挙が近づくなか、韓国世論は互いの存亡をかけた政権と検察の攻防の行方を見守っている。

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