ネット通販「後払い」急成長 限度額決めるAIカギ

2019/9/16 0:00
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スタートアップ企業による後払い決済のサービスがインターネット通販市場を支えている。後払いはクレジットカードがなくても衣料品などを買える仕組みで、わずらわしい操作が要らないと女性の利用者が急増。ペイディー(東京・港)は3年近くで10倍に増えた。人工知能(AI)で利用限度額をはじく技術など、テクノロジーが競争の鍵となっている。

■ペイディー、登録250万人

「支払いまでスムーズで面倒なことがない」

東京都内の大学に通う20代の女性は今年、ネットでの洋服の買い物にペイディーの後払いサービスを使い始めた。月5千~8千円使い、よく行くコンビニエンスストアで翌月に払っている。

画面で入力するのは携帯電話番号とメールアドレスだけ。携帯に送られる本人確認用の番号を決済画面に入れると、AIが後払いできるか否かを判断。可能であれば限度額をはじく。その間、たった0.5秒だ。

 ▼後払い決済 注文した商品を受け取ったあとに代金を払う仕組み。消費者は携帯電話番号やメールアドレス、住所、名前などを入力すれば済む。ペイディーは信用情報会社が持つ多重債務者の電話番号などと照らし合わせ、人工知能(AI)で分析している。ネットプロテクションズは約300項目で調べる。不動産会社と連携し、空き家の住所が入力されていないかも分析する。
 同社は14年から事業を始めており、伊藤忠商事などが出資している。今月のアカウント数は250万件で、15年の20万件から大幅な成長だ。導入企業は楽天のフリーマーケットサイトなど70万あり、利用者の中心は20~40代の女性。ネットでの買い物が増え、入力や支払いのわずらわしさを減らすニーズが拡大した。

消費者を律する仕組みはある。初回の限度額は数万円たらず。代金を払っていくと限度額が上がるが、支払いが遅れたら下げる。限度を超えて買おうとすればAIがストップさせる。高級ブランド品など換金しやすい商品の審査は厳しい。

杉江陸社長は「貸倒件数は全体の1%程度」と話す。二ケタにのぼることもある消費者金融より大幅に低い。

■ネットプロテクションズもAI磨く

調査会社によって数字は違うが、国内の後払い決済額は5千億円前後とみられている。電子商取引で使われる金額の3%にあたるという。使える分野はネット通販から広がっている。ペイディーは今月、航空券予約サイトのエボラブルアジアとの協業を発表した。

急成長するペイディーに対し、最大手のネットプロテクションズ(同・千代田)も手を打つ。キヤノンITソリューションズと開発してきた審査用のAIについて、導入に向けた検討を急いでいる。

02年に事業を始め、11年から信用度の判定にAIを使ってきた。人間の脳の構造をまねて計算能力を高める「深層学習」で実験したところ、審査精度が上がった。後払いサービスを提供できないと判定せざるを得なかった消費者も、一部は提供が可能になるとみる。

ネットプロテクションズの現在の年間決済額は2500億円という。支払いは商品発送から14日以内。限度額は最大5万4千円で、特段設けないペイディーと異なる。

ネットプロテクションズはさらに、後払いの利用拡大を狙って8月、国内初となる「価格の後決めサービス」を発表した。消費者が商品を買ったあと、その商品にいくらなら払うかを決められる。家事手伝いのベアーズなど7社のサービスを対象に始めた。後払いのオプションとして使える。

■海外ではユニコーンも

新興企業に刺激されて参入が続く。ひとつがメルカリだ。スマートフォン決済のメルペイ利用者で18歳以上なら使える。フリマサービスでの取引や個人間のコミュニケーションなどをAIで分析し、個人ごとの利用限度額を決める。ただ、最大で20万円までだ。

「後払いサービスの種類を広げる」とメルペイ(同・港)の山本真人執行役員。社外のデータと連携する方針だ。国内で競争が急速に広がる。

世界では陣取り合戦がすでに始まっている。スウェーデンのクラーナは企業価値が10億ドル(約1000億円)を超す非上場企業「ユニコーン」で、欧州に加え米国へ進出した。シンガポールのフィンアクセルは子会社を通じてインドネシアで事業を営み、東南アジアの他国でもシェア獲得をにらんでいる。

ペイディーは6月、台湾企業を買収した。金融とIT(情報技術)が融合した日本のフィンテック企業がどこまで成長できるか。世界でネット市場が拡大する流れに乗り遅れれば、成長はおぼつかない。

(矢野摂士、駿河翼、桜井芳野)

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