福島の日常歌い続けるロックバンドがベスト盤

文化往来
2019/9/17 6:00
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福島と東京を拠点に活動するロックバンド、音速ラインは等身大の歌詞と王道ロックを地で行くパンチのきいたサウンドが人気を集める。藤井敬之、大久保剛の2人が2003年に結成し、今年16周年を迎えた。11年3月11日、東日本大震災の津波・原発事故によって藤井の地元である福島が甚大な被害を受け、音楽活動や人生観が一変した。9月4日、そんな彼らの震災前後の心境の変化を反映したベストアルバム「おてもと」を発表した。

音速ラインの藤井敬之(右)と大久保剛

音速ラインの藤井敬之(右)と大久保剛

「直接震災のことを歌うのではなく、あくまでリアルな福島の日常を歌ってきた」。現在も郡山市内に住むボーカル・作詞作曲担当の藤井は言う。アルバムは震災前に作った「マジックワード」や「打ち上げ花火」から、新曲の「Sugar&Spice」「アンカー」まで17曲を収録。特に震災後に作った「ありがとね」などの楽曲には、当時の心情が率直に表現されている。「東京では震災のことは風化しつつあるけど、福島では今も天気予報で線量計の数値が毎日表示されるのが当たり前。風化しようがない。福島と東京をずっと行き来しているので、その温度差がよく分かる」(藤井)

震災当時、音速ラインは名古屋でのツアー中だった。地元の惨状を聞いた藤井はすぐに福島に戻ろうとしたが、妻の「あなたたちを待っているファンがいる」という一言でツアーを続行した。ベースの大久保は藤井の創作過程を見ていて「震災後はよりストレートに気持ちをぶつけるようになった」と感じた。

今後は福島での音楽祭出演などを続けつつ、今年は9月23日の東京など全国5カ所を回る。「人生良くないこともあるが、それも含め人生。何があっても最終的には前を向ける音楽を作りたい」と藤井は話す。

(岩崎貴行)

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