2019年9月19日(木)

追突「怒り発散のため」 堺あおり、二審も殺人認定
大阪高裁判決 専門家「重大犯罪明確に」

2019/9/11 20:47 (2019/9/12 0:16更新)
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悪質なあおり運転に対し、司法は再び殺人罪の成立を認めた。堺市で2018年、車をバイクに追突させ男子大学生を死亡させたとして、殺人罪に問われた中村精寛被告(41)の控訴審判決で、大阪高裁(樋口裕晃裁判長)は11日、懲役16年とした一審判決を支持。故意ではないとした被告側の主張を退け「怒りにかられて被害者を追跡し、怒りを発散させるために追突した」と認定した。

あおり運転を巡り殺人罪で立件されるのは異例で、一審の大阪地裁堺支部の裁判員裁判と同様に殺意の有無が争点になった。あおり運転による事故や事件が相次ぐ中、殺人罪の成立を認めた高裁判決は、厳罰化を求める社会の要請に沿った判断となった。

判決によると、中村被告は18年7月2日夜、堺市南区の府道で前方に入ったバイクに立腹し、時速96~97キロで追突。大学4年の高田拓海さん(当時22)に頭蓋骨骨折などのけがを負わせて死亡させた。

判決理由で樋口裁判長は、ハイビームの執拗な照射やクラクションについて「被害者への怒りによる威嚇の行為だ」と指摘。被告のドライブレコーダーの記録からは衝突しそうになった時の焦りや不安などは伝わらないとし、1月の一審判決に続き「被害者が死んでも構わない」との未必の殺意があったと認定した。

被告のドライブレコーダーには衝突後に「はい、終わり」という音声が残されていた。被告側は「事故に落胆し、仕事ができなくなるという意味だ」と訴えたが、樋口裁判長は否定。自身の一連の行動が終わったことを自らに語りかけたと解釈できるとし「怒りにかられて追跡し、怒りを発散させる手段として衝突した。衝突は想定内の出来事だった」と判断した。

その上で、樋口裁判長は「被害者に落ち度はなく、被告が勝手に怒りを増幅させた」と指摘。殺人罪を適用し、懲役16年を言い渡した一審の量刑は妥当と結論づけた。

悪質なあおり運転が後を絶たない中、警察当局は道路交通法違反(車間距離保持義務違反)だけでなく、より刑罰の重い刑法も積極的に適用して取り締まりを強化している。ただ、現行法にはあおり運転自体を罰する規定はなく、警察庁は罰則の強化など法改正を検討している。

同志社大の川本哲郎教授(刑事法)は大阪高裁判決について「あおり運転が重大な犯罪であることを明確に示した適切な判断で、摘発の機運の高まりや抑止力の効果が期待できる」と指摘。その上で「法改正に当たっては、現在は最大10年となっている免許剥奪期間を20年~30年に延長することや、ドライブレコーダーの設置を義務付けることなども含めて議論すべきだ」と話している。

控訴審判決を受け、記者会見する高田拓海さんの遺族(11日午後、大阪市北区)

控訴審判決を受け、記者会見する高田拓海さんの遺族(11日午後、大阪市北区)

今もLINE/ご飯作り続ける 母親「ただ会いたい」

「ただ会いたくて、拓海の笑っている顔が見たい」。大阪高裁判決を受け、亡くなった高田拓海さん(当時22)の母親(46)は11日、大阪市内で記者会見し、涙をぬぐいながら息子への思いを吐露した。

拓海さんは3人兄弟の長男。母親によると、事件から1年2カ月がたった今も、返信のないメッセージを無料対話アプリ「LINE(ライン)」に送り続け、夕食時には拓海さんの分も作ってテーブルに並べる。「周囲を幸せにしてくれるかけがえのない私の子どもだった」と振り返り、「改めて息子はとてもひどいことをされ、痛い思いをした」と声を震わせた。

一審と同じ懲役16年の量刑は「もっと重く言ってほしいという期待があった」とも。判決を聞きながら時折首をかしげるしぐさを見せた中村精寛被告には「怒りを通り越している」とやりきれなさをにじませ、悪質なあおり運転が相次ぐ現状について「なぜ気持ちのコントロールができないのか。ただ不思議だ」と厳罰化を強く訴えた。

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