創業型の事業承継 広がる、愛媛県など支援策

2019/9/13 16:19
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学習塾事業を承継した佐々木社長は新事業展開にも力を入れる(愛媛県今治市内)

学習塾事業を承継した佐々木社長は新事業展開にも力を入れる(愛媛県今治市内)

経営を引き継いだことを機に新事業進出や商品開発などに取り組む、創業型の事業承継が拡大している。少子高齢化に伴う後継者不足が深刻になる中、事業承継と新市場開拓などの課題を同時解決する手段として注目され始めた。愛媛県内の関係機関も講習や交流会などを開き、こうした取り組みを後押しする。

愛媛県今治市の中心部にある佐々木進学教室。創業者の父親からバトンを引き継ぎ2017年に社長になった佐々木佑介氏(30)は、この2年で個別指導型の生徒数を2倍強に増やした。市内の獣医学部の学生らが講師を務め、「中学生などの保護者から好評」(佐々木氏)という。今後、個別指導の生徒数をさらに倍増し100人規模にする考えだ。

新たな事業展開として構想を温めているのが、幼児や小学生らを対象とした学習教室。今年中にも開設したい考え。さらに将来、キャリア教育への進出も視野に入れる。会社設立から20年近く、小中高生向けの典型的な学習塾だったが、社長交代を機に新たな事業領域にカジを切り始めた。

タオル産地としても有名な今治市で、タオルの生産・販売会社、丹後の丹後博文社長(39)は、3年前に新ブランドを立ち上げた。今年8月、東京の百貨店の売り場に、同社の「OLSIA(オルシア)」ブランドの商品が並んだ。「織る」と「幸せ」を組み合わせた言葉で、今や売上高の約25%を同ブランド製品が占める。

もともと不動産業と保険代理店を手掛けていた丹後氏は15年に、タオル会社の社長から廃業を考えていると打ち明けられた。この分野には素人だったが、同年に新会社の丹後を設立。約10人の従業員とともにタオル事業を承継した。消費者の視点を大事にしたいと考え、赤ちゃん用の円形タオルなどを開発し、好評を得ている。

団塊の世代が経営の第一線から退く時期に差し掛かり、少子高齢化も相まって、企業の事業承継は大きな課題だ。愛媛県商工会連合会が18年に約5400社を対象に集計した実態調査では、回答企業の約45%が自分の代での廃業を考え、そのうち28%の企業が5年以内の廃業を考えている――との結果だった。

事業や技術の承継とともに、「後継者の下で新事業進出などの活力を吹き込むことが重要となっている」(県経営支援課)。県では将来の承継予定者らを対象に、「ベンチャー型事業承継セミナー」を9月中に松山市内で開催する。親族間の承継のほか、第三者からの承継も対象に含め、事業プランに関するグループ討議などに取り組む。

マネジメントゲーム研修を後継者育成につなげる(松山市内)

マネジメントゲーム研修を後継者育成につなげる(松山市内)

関係機関もこうした動きを後押しする。えひめ産業振興財団は8月下旬、後継者育成のためのマネジメントゲーム研修を松山市内で開催した。研修では参加者がメーカーの経営者になったと想定。仕入れ、生産、販売、設備投資などを決定し、どれだけの利益を毎期、計上することができたかを競い合う。東予・南予地域も含めて、今年度中に数回の開催を予定している。

同財団では、経営者同士の交流も促進し、事業承継のきっかけ作りにつなげる。今夏から交流の場をSNS上に立ち上げ、1000人規模にまで拡大する計画だ。「事業承継のニーズがある人同士を引き合わせる」(同財団)とともに、経営プラン作りの面でも支援を強化していく。

(片山哲哉)

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