2019年9月16日(月)

輸出管理巡る日韓対立、WTO紛争処理へ 長期化必至

経済
朝鮮半島
2019/9/11 23:13
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韓国政府は11日、日本の輸出管理厳格化が世界貿易機関(WTO)の協定違反だとして提訴したと発表した。半導体材料を巡る日韓対立はWTOの枠組みに舞台を移す。WTOの紛争処理は結論が出るまで平均2年以上かかるうえ、最終審が委員の不足による審理不能に陥りかねない波乱要因もある。内政で新たな火種を抱えた文在寅(ムン・ジェイン)政権が訴えを取り下げる可能性は低く、対立の長期化は必至だ。

「韓国だけを直接的に狙った差別的な措置であり、WTOの根本原則に違反する」。韓国産業通商資源省の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長は11日の会見で、日本の輸出管理についてこう批判した。今回の提訴について「日本の輸出許可制の乱用を防ぎ、類似した措置を事前に防ぐ必要もあると判断した」とも述べた。

WTOは貿易紛争処理で二審制をとり、まず2カ国間で解決法をさぐる協議が起点となる。一般的には訴える側の国が、紛争解決手続きの第1段階である2国間協議を相手国に求めた時点で「WTOに提訴した」とみなされる。韓国は11日、日本に協議を要請した。

同日午前に記者会見した世耕弘成前経済産業相は「日本の措置はWTOルールに整合的であることは明確だ」と反論。2国間協議については「協議要請内容を精査し、適切に対応する」と述べるにとどめた。まずはWTOの制度に基づく協議に応じるかが焦点となる。

日本が応じない場合も含め、最長60日以内に協議で進展がなければ、提訴した国は第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)での審理を要請できる。どちらかでもパネルの判決に不服の場合、最終審にあたる上級委員会に舞台が移る。提訴から上級委の判断まで2年以上かかるのが通例だ。

足元では上級委の審理が綱渡りの状態という問題も抱える。定数は7人だが、WTOの機能不全を批判する米国が再任や補充を拒否。現在は審理に最低限必要な3人しかいない。12月にはさらに2人の任期が切れて新規案件の審理ができなくなるため、パネルで敗訴した側が上訴しても紛争は宙に浮くことになる。

文氏は疑惑が相次ぎ表面化した側近の曺国(チョ・グク)氏の法相任命を強行。政権運営の新たな不安要因を抱えた。2020年4月の総選挙をにらみ、革新系支持層の求心力を高めるため、日本に譲歩する姿勢を見せられない状況が続くという内政の環境もある。

WTOで争うことになる輸出管理を巡っては日韓の主張が平行線をたどっており、紛争の長期化は避けられそうにない。

WTOでは加盟国間での貿易の差別を禁じる「最恵国待遇」の原則があるほか、輸出入ともに数量制限を禁じている。韓国はこれらを定めた関税貿易一般協定(GATT)第1条や同第11条に違反しているとして日本の不当性を訴える構えだ。

韓国がWTO提訴の最大の理由としてあげたのは、日本の輸出管理厳格化が元徴用工問題に絡む報復という「政治的動機」だとする点だ。11日の会見で兪氏は「政治目的で貿易を悪用する行為が繰り返されないようにする」とも強調した。

これに対し、日本は「あくまで安全保障上の措置だ」(世耕氏)と説明する。WTOは安保を理由にしたGATT第21条の例外規定を設けており、日本はこれらを根拠に反論する見通しだ。

(ソウル=島谷英明、杉原淳一)

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