佐藤正午の直木賞受賞作、「岩波文庫」の装いで文庫化

文化往来
2019/9/18 6:00
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刊行から2年半でまさかの「岩波文庫」入り!? 岩波書店は10月4日、作家・佐藤正午の直木賞受賞作「月の満ち欠け」を、岩波文庫を模した装丁で刊行する。古典的な作品をそろえるお硬いレーベルの体裁で文庫化するという、遊び心たっぷりの計らいだ。

日本文学の緑帯ではなく「金帯」。左下の「種まく人」のマークもタイトルに引っかけて満ち欠けする月になっている

日本文学の緑帯ではなく「金帯」。左下の「種まく人」のマークもタイトルに引っかけて満ち欠けする月になっている

よく見るとカバーには「岩波文庫的」とあり、日本文学(近代・現代)を表す緑帯ではなく、月をイメージしたゴールドだ。著者番号の代わりに「S-825」と、佐藤のイニシャルと誕生日8月25日の組み合わせを記している。価格は850円(税抜き)。

「月の満ち欠け」は愛する人と会うために何度も生まれ変わる女性と、その周囲の人々を描く長編小説。奇抜で複雑なストーリーを鮮やかに組み立てた手腕が高く評価され、2017年に第157回直木賞を受けた。

担当編集者の坂本政謙氏によると、佐藤は「岩波文庫に入れてほしい」と冗談まじりに話していたという。大江健三郎など純文学の現役作家の作品が同文庫に入った例はある。「しかし、刊行から2年半でというのは……。無理ですよ、と返した記憶があります」(坂本氏)

「月の満ち欠け」は岩波書店から出た文芸書としては初めて直木賞を受けた作品だ。作家とともに着地点を模索し「岩波文庫的」装丁が生まれた。「こういったことを面白がってくれる方がいれば、また考えたい」と坂本氏。位置づけとしては「文庫サイズの単行本」であり、岩波文庫や岩波現代文庫の目録には入らない。

書店ではどういう扱いになるのか。三省堂書店有楽町店の内田剛副店長は「迷わず岩波文庫コーナーに入れる」と話す。古今東西の大古典とともに並ぶことになる佐藤正午作品。熱烈なファンが多い作家だけに、話題を呼びそうだ。

(桂星子)

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