2019年9月16日(月)

アップル、体力勝負へ スマホも動画も低価格戦略
Nikkei Views 編集委員 奥平和行

ネット・IT
北米
2019/9/11 11:30
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「Pro」は3つのカメラで広角で撮影をしたり、より解像度の高い写真を撮ったりできるようにした(10日、クパチーノ)=ロイター

「Pro」は3つのカメラで広角で撮影をしたり、より解像度の高い写真を撮ったりできるようにした(10日、クパチーノ)=ロイター

米アップルによる「帝国」の再拡張に向けた動きが鮮明になってきた。10日の新製品発表会で「iPhone」の主力機種の価格を引き下げ、新モデルを出すたびに価格帯を上げてきた戦略を転換する。成長分野の動画配信も料金を手ごろに設定して利用者の取り込みを急ぐ。円換算で20兆円を上回る豊富な手元資金を武器に体力勝負に打って出るが、米中貿易摩擦の激化などのリスクもある。

「iPhoneは多くのイノベーションを提供しており、たくさんの人にそれを経験してほしい」。説明会でiPhoneのマーケティングを担当するカイアン・ドランス上級ディレクターはこう説明し、主力機種「11」の価格を699ドル(日本では7万4800円)からにすると発表した。

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11は現在の主力機種「XR」の後継にあたり、背面のカメラを2つに増やして超広角の写真などを撮影しやすくした。カメラはスマートフォンの構成部品のなかではスクリーンに次いで高価だが、価格は50ドル下げた。上位機種の「11Pro」「11ProMax」も価格を据え置いた。

スマホの大きな伸びが見込めないなかアップルは「付加価値の高さを売り物にする」(幹部)として、2017年から価格を引き上げる姿勢を鮮明にしてきた。ただ、消費者からは「高すぎる」との声もあがり、米IDCによると4~6月期のアップルの世界シェアは前年同期より2ポイント低い10.1%にとどまった。今回の値下げは明確な方針転換となる。

背景にはスマホ市場の成長鈍化と事業環境の変化がある。スマホは世界的に普及が進んで市場の伸びが鈍化し、IDCによると18年の世界出荷台数は前の年より4%少ない14億490万台にとどまった。2年連続の前年割れだ。スマホの販売減速は半導体など部品メーカーの業績にも影を落としている。

アップルが利用者の裾野拡大にかじを切る一因は、アップル製品の利用者がアプリやコンテンツをよく購入する「上客」であるからだ。アップルの基本ソフト(OS)「iOS」を搭載したスマホの世界シェアは1割強にとどまる一方、アプリの売上高では6割以上を占めて米グーグルの「アンドロイド」を圧倒しているとの推計もある。

10日はこうした基盤を生かしたコンテンツ事業の拡大に説明の時間を割いた。ゲームの定額制サービスに乗り出すほか、動画配信でも米国などで11月から「アップルTV+(プラス)」を始める。動画の月額料金はティム・クック最高経営責任者(CEO)が自ら「クレージー」と話した4.99ドル(約540円)に設定した。

「今日一番のサプライズはこれ」。説明会を視聴したアナリストはこう話していた。先行する米ネットフリックス(8.99ドル)や今秋に参入する米ウォルト・ディズニー(6.99ドル)を下回る。アップルはハード、ソフト、サービスの「垂直統合」が特徴だが、動画配信では韓国サムスン電子のテレビにアプリを提供。総力戦で追い上げる構えだ。

アップルは圧倒的な資金力を背景に、独自コンテンツの確保に向けた予算も積み増す方針だ。「25年までにネットフリックスに匹敵する規模に育つ」(米大手証券)との見方も出ており、再成長に向けた道筋は確かなように映るが、その一方で不安材料もある。

4~6月期のアップルのスマホの売上高は前年同期より12%少ない259億ドルにとどまった。腕時計型端末「アップルウオッチ」などの販売が伸びてスマホの全社売上高に占める比率は48%まで下がったが、それでも「稼ぎ頭」である事実に変わりはない。この屋台骨を支えるビジネスに米中の対立激化が影を落としている。

世界最大のスマホ市場となった中国では華為技術(ファーウェイ)など自国メーカーの製品を好む消費者が増え、iPhoneの苦戦が目立つ。また、米国では腕時計型端末などが対中追加関税の影響を受け、クリスマス商戦が終わるとスマホも対象に加えられる見通しだ。事業環境が厳しさを増すなか、再成長を速く軌道に乗せるスピードを問われている。

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