2019年9月16日(月)

Apple「4.99ドル」動画の衝撃、14億台へ一気呵成

ネット・IT
北米
2019/9/11 6:07
保存
共有
印刷
その他

「アップルTV」は月4.99ドルでひとつのアカウントを家族で使うことができる(10日、クパチーノ)=ロイター

「アップルTV」は月4.99ドルでひとつのアカウントを家族で使うことができる(10日、クパチーノ)=ロイター

米アップルは10日、月額4.99ドル(約536円)で動画配信サービスを始めると発表した。競合するネットフリックスなどより安く、後発ながら一気にシェアを奪おうとの狙いが透ける。販売に陰りがあるとはいえ同社のスマホ「iPhone」は世界で14億台が稼働するプラットフォームだ。巨人の参入は動画市場の競争をさらに激化させかねない。

【関連記事】
新型iPhone、699ドルから 動画も月4.99ドルの低価格
新iPhone触ってみた カメラ進化、ゲームさくさく

「ビデオを借りるのと変わらない」。アップルのイベントに登壇したティム・クック最高経営責任者(CEO)はこの日、11月1日から始める動画配信サービス「TV+」の価格を誇らしげに示した。

4.99ドルはネットフリックスの8.99ドルやウォルトディズニーの6.99ドルを下回る。競合を意識した価格設定であることは明らかだ。さらにアップル製品を買ったユーザーは1年間はサービスが無料となる。クリスマスの年末商戦にスマホなどを買う人を想定し、ユーザーを囲い込もうとしている。

アマゾン・ドット・コムやフールーも含め、いまや競合がひしめく動画配信の世界だが、アップルの強みは潜在ユーザーを世界に抱えている点にある。動画の視聴窓口のなる同社のスマホは世界で14億台が稼働中。アップルが新参ながら100カ国以上でサービスを立ち上げるのは、ハード事業で培ってきた土台があるからだ。

「アップル」のブランド力も強み。すでに著名映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏や人気テレビ司会者のオプラ・ウィンフリー氏らが協力を表明している。ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOは昨秋、アップルの動画事業について「彼らはソフトを熟知したハードメーカー。ディズニーよりも気になる」と警戒心をあらわにしていた。

いまや動画はiPhone事業への依存度を減らしたいアップルの次の成長の切り札にもなっている。07年の投入後、一世を風靡してきたiPhoneだが、2019年は6月末まで9カ月間の売上高が前年同期比15%の大幅減。ハードではなくソフトを売るビジネスを拡大しない限りは尻すぼみに陥りかねない。

とはいえクックCEOの見込み通りに動画事業が拡大するかはなお課題が残る。

ネットフリックスは19年だけでコンテンツ関連費に175億ドルをつぎ込むとされている。優れたクリエーターの取り合いは過熱しており、アップルも60億ドルを費やすものの業界内ではまだ見劣りする。またディズニーは過去からの映画資産を動画に生かすなど、コンテンツ企業としての強みを発揮している。

ハードとサービスの融合を目指すクックCEOの戦略は、いまや動画業界をも揺さぶり始めた。アマゾンならぬ「アップル効果」は巡り巡って自身のビジネスを助けるのか。「5ドル」動画は変化にもがく今のアップルの裏返しといえる。

(シリコンバレー=佐藤浩美、ニューヨーク=中西豊紀)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。