なお続く千葉の停電 台風の余波、生活へ打撃大きく

台風15号による大規模な停電は関東南部で10日も続き、千葉市などでは復旧が11日にずれ込んだ。冷蔵庫やエアコンが使えず、生活に与える影響は大きい。気温が上昇しており、熱中症リスクも高い。千葉県によると、停電している南房総市で、女性(93)が熱中症とみられる症状で死亡した。「仕事にならない」「食材がなくなる」。被災住民の訴えは切実だ。
死亡した女性は10日午後3時すぎ、自宅の布団の中で、心肺停止の状態で倒れているのを家族に発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。千葉県では、南房総市に隣接する鴨川市で今年最高の35.5度を記録するなど気温が上昇していた。
「パソコンやファクスが使えず、冷房もない。仕事にならない」。千葉市若葉区の梱包資材商社の従業員、伊藤尚宏さん(44)は汗を流しながら商品の配送や整理にあたった。千葉市は10日、最高気温34.7度を観測し、今年一番の暑さ。従業員らは会社前に止めた車の中で交代で休憩した。
同区内のコンビニエンスストアには「営業中止」の張り紙が掲げられ、飲食店はシャッターを下ろした。区内在住の女性(82)は「きょう中に冷蔵庫の生ものの食材が使えなくなる」と不安がる。マンション駐車場が停電で車を出せない会社員の男性(67)は区役所で給水を受けたが「この暑さで、水を歩いて運ぶのは大変」とこぼした。
情報収集や連絡に欠かせないスマートフォンも電気が必要だ。充電用に電源車を用意した富里市役所には10日、多くの人が詰めかけ、冷房が使えない役所内でうちわを手に順番を待った。
充電できるまで1時間半待ったという高校1年の染谷竜士さん(16)は「昨晩からスマホの電源が切れ、友達と連絡が取れないし、電車の運行情報を調べるのも大変だった」という。
「牛が暑さで死んでしまうのでは」。千葉北部酪農農業協同組合(千葉県八千代市)の担当者は危機感を強める。停電が続く県南部は酪農が盛んな地域。乳用牛は暑さに弱く、夏場は扇風機を回している。東日本大震災をきっかけに自家発電機を備える酪農家は増えたが、停電でまかなえる電力量の限界が近づく。
停電で出荷先の乳業工場が受け入れを停止し、生乳も行き場を失う。搾乳を止めれば乳牛が乳房炎になるため、生産は止められない。担当者は「このままでは搾った乳を廃棄せざるをえない」と肩を落とす。県畜産課によると、電話がつながらず被害情報の収集も難航している。
学校や医療機関への影響も甚大だ。木更津市の公立保育園は10日朝から給食の食材納入業者とのやりとりに追われた。11日以降の給食の見通しが立たず、女性保育士は「停電が続く家庭もあり、弁当持参を頼むのも心苦しい」と首を振る。
小中学校は10日も千葉県内で3分の1にあたる442校が休校し、105校が授業を短縮した。千葉市教育委員会は「停電が続く地域は11日も再開は難しいかもしれない」とみている。
千葉県によると、県内で停電した病院は70病院。9日未明に停電し自家発電設備を持たない西佐倉印西病院(同県印西市)に入院中だった男性患者(62)の死亡が9日朝に確認された。男性は電気が必要なたんの吸引治療を受けていたといい、県が死亡との因果関係を調べている。