中国、豚肉高騰で物価上昇 8月2.8%

2019/9/10 16:41
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【北京=原田逸策】中国で景気が減速しているのに物価が上昇している。アフリカ豚コレラのまん延で豚肉が高騰したからで、消費者物価指数(CPI)の上昇幅は6年ぶりの大きさとなった。庶民の不満を警戒し、習近平(シー・ジンピン)指導部は価格を抑える対策に躍起だが、効果を上げるには時間がかかりそうだ。

2019年8月のCPIは前年同月比2.8%上昇した。上昇幅は7月から横ばいで、春節(旧正月)休暇による特殊要因を除くと、13年11月以来の高水準で推移する。

豚肉の小売価格が47%上昇したのが主因だ。豚肉だけでCPIを1.08ポイント押し上げた。豚肉の値上がり幅は7月(27%)から20ポイントも拡大した。国家統計局によると、豚肉の卸売価格は値上がり幅がさらに大きく、8月末は1年前の約2倍だ。

アフリカ豚コレラの広がりを防ぐ殺処分などで、7月の豚の飼育頭数は前年同月より32%も少ない。出荷頭数は同11%しか減っておらず、需給の逼迫は今後さらに強まる恐れがある。中国は1~7月に36%増の100万トンも豚肉を輸入したが、消費量全体の2~3%にとどまり焼け石に水だ。

豚肉高騰はマクロ経済政策に響きかねない。国盛証券は「20年前半はCPIが3%を突破し、2~6カ月間は3%台で推移」と試算する。3%は中国政府がCPIの上限に設定する水準。物価上昇が足かせとなり、中国人民銀行(中央銀行)が金融緩和に動けなくなる事態も否定できない。

中国政府も対策に動く。物価上昇を抑えるための補助金を24億元(約360億円)配った。7日にはマクロ経済の司令塔である国家発展改革委員会が、養豚場の大規模化に最大500万元を補助すると発表した。ただ、豚の生育には5~6カ月かかる。みずほ総合研究所の三浦祐介主任研究員は「対策の効果が表れるには時間が少しかかる」と指摘する。

庶民の食卓に欠かせない豚肉の値上がりは政治問題になりやすい。習指導部が恐れるのは、豚肉高騰と米中貿易摩擦を結びつけられることだ。中国は昨年、米国産の豚肉だけでなく、豚のエサとなる大豆にも25%の追加関税をかけた。9月1日にはさらに5~10%の関税を上乗せした。共産党機関紙の人民日報は8月末に「豚肉高騰と貿易摩擦は関係なし」とした記事をわざわざ載せた。

CPIが上昇するのに生産は低迷し、景気の下押し圧力は強い。卸売物価指数(PPI)は8月に0.8%下落し、生産活動の弱さを裏づけた。食品は値上がりしているが、鉄や非鉄金属、化学製品など工業製品の大半は値下がりしている。景気低迷下で身の回りの物価が上がる「スタグフレーション」に陥る懸念もささやかれている。

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