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欧州中銀、3年半ぶり金融緩和検討 米利下げが連鎖

【ベルリン=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は12日の理事会で、3年半ぶりの金融緩和を検討する。現在マイナス0.4%の中銀預金金利をさらに引き下げるほか、より長い期間緩和を続けると約束する可能性が高い。国債などを大量に買い入れる量的緩和政策の再開には異論があり、慎重に判断する。景気減速が進むなか、先行して利下げを進める米国と足並みをそろえる。

ECBが再び緩和拡大を検討するのは、米中貿易戦争や英国の欧州連合(EU)離脱交渉などで欧州経済の先行きの不透明感が強まり、景況感の悪化に歯止めがかからないためだ。18日には米国が追加利下げに動くとの見方が強く、先手を打つ意味合いもある。今週から来週にかけて政策決定会合を開くトルコ、ブラジルなども追随する可能性がある。

ECBは2018年12月に量的緩和政策を終了し、金融政策の正常化を進めてきた。だが物価上昇の勢いは強まらず、一度も利上げできないまま、再び緩和局面に突入することになる。

ドラギ総裁は7月の理事会後の記者会見で「すべての政策手段を調整する用意がある」と述べ、9月緩和を強くにじませていた。政策手段が残り少ないなか、ECBは9月理事会で具体的にどの緩和カードを切るか、詰めの議論を進める。

最も有力なのが、利下げの再開だ。ECBは短期金利の指標となる主要政策金利をゼロ%、銀行が余剰資金を中央銀行に預ける際の金利をマイナス0.4%にしている。利下げは米欧金利差に直結するため、ユーロ高を防ぐ効果がある。金融市場では中銀預金金利をマイナス0.5%程度に引き下げるとの見方が広がっている。

もっとも、中銀預金金利の引き下げは資金を預ける民間銀行の収益を圧迫する。銀行界は「低金利は長期的に金融システムを破綻させる」(ドイツ銀行のゼービング最高経営責任者)などと警戒を強めている。ECBはマイナス金利がかかる対象を中銀預金の一部だけにとどめる負担軽減策の導入を検討中だ。

さらにECBは「政策金利を現状かより低い水準に、少なくとも2020年前半までとどめる」とする政策の先行き指針(フォワード・ガイダンス)の変更を視野に入れる。期間をさらに長くする案などが浮上している。9月に開始する銀行への長期資金供給策(TLTRO3)の条件緩和を求める声もある。

最大の焦点は、18年12月に終了したばかりの量的緩和政策を再開するかどうか。緩和に慎重なドイツやオランダだけでなく、フランスからも「すべての政策手段を同時に投入する必要はない」(ビルロワドガロー仏中銀総裁)などと慎重な声があがっている。

ECBはすでに政策金利がマイナスの領域に入り込み、国債も大量保有しているため、これ以上の緩和の余地は限られている。金利を下げすぎれば、銀行の収益が悪化して融資が伸びなくなったり、金利生活者に将来不安が広がるなどの副作用が広がりかねない。

次期ECB総裁候補のラガルド氏は4日、欧州議会の経済金融委員会で大胆な緩和の必要性を認めながらも「潜在的な副作用に注視する必要がある」と語った。副作用が効果を上回る水準(リバーサルレート)を見極めながら、限られたカードをどこで切るかがECBの大きな課題だ。

ドラギ総裁らECB幹部はドイツなどの財政出動への期待を繰り返し表明している。金融緩和だけに頼った景気対策はすでに限界に達しつつあり、景気減速の影響が大きく財政余力のあるドイツなどがどこまでECBに足並みをそろえられるかが今後のカギとなる。

緩和競争の拡大は世界経済の下支えに一定の効果が見込まれるものの、資産バブルなどの原因にもなる。すでに世界の債務残高はリーマン・ショック前を大幅に上回る水準で、危機の芽は大きく膨らんでいる。効率の悪い投資が増加し、長期的な成長率を押し下げてしまう問題もある。

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