GAFAに政治の風圧 米50州・地域が独禁法調査

2019/9/10 15:21
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反トラスト法(独禁法)をめぐるシリコンバレー企業への政治の風圧が増している。米50州・地域の司法長官らは9日までにグーグルとフェイスブックへの調査開始を発表した。司法省など連邦当局がすでに両社の調査に乗り出しているが、全米規模での地方の対応はこの動きを後押ししそうだ。成長を続けてきた「GAFA」と呼ばれるIT大手への警戒論が米国内でも高まっている。

「広告の買い手も売り手もすべてをグーグルは支配している」(テキサス州のパクストン司法長官)。9日、ワシントンにある連邦最高裁前には12人の州司法長官が一斉に集まり、米ネット広告市場で36%ものシェアを占めるグーグルへの懸念を相次いで表明した。

調査にはカリフォルニア州とアラバマ州を除く48州と2地域が参加する。「競争をなくすために新興企業を買収してきたのでは」(テネシー州のスレイタリー司法長官)、「州内の企業がコスト増になっていないか調べる」(アラスカ州のクラークソン司法長官)と問題視する事項は幅広い。ルイジアナ州のランドリー司法長官は「このままではネット上の情報配信が滅亡する」と厳しい姿勢を示した。

各地域の司法長官は共和党所属のテキサス州から民主党所属のニューヨーク州まで超党派だ。カリフォルニア州の司法省は個別案件への言及は避けつつ「我々は競争を阻害する行為と戦うことに非常に力を入れている」と強調した。6日にはニューヨーク州など9州・地域がフェイスブックへの反トラスト法違反での調査を発表した。

州の司法長官は選挙で選ばれるため今回の動きを「大手テック企業をたたくことで政治的な票を稼ごうとしている」(ペンシルベニア州立大学のジョン・ラプツカ法学部教授)とみる声もある。ただ全米ほぼすべての州で超党派の調査が始まることで、司法省や米連邦取引委員会(FTC)に対してもGAFAに厳しい調査を促す効果がありそうだ。

実際、米ジョージワシントン大学が9日開いた反トラスト問題を巡るイベントに出席した司法省のデルラヒム反トラスト局長は「地方とは緊密に協議している」と記者団に述べた。同省は7月にGAFAの反トラスト調査を始めたが「対応が遅いのでは」(州関係者)との批判もくすぶる。ユタ州のリエス司法長官も「2016年からFTCにグーグルの問題を指摘してきたが取り合ってもらえなかった」と話す。

今後の焦点は、具体的に当局がどこまでの措置をとるかだ。1998年には司法省と米20州がマイクロソフトを反トラスト法違反で共同提訴し、同社のビジネスモデルを大きく変える流れをつくった。米国では「値上げなど、消費者にとって不利益かどうか」が反トラスト法違反の決め手とされており、無料のビジネスを手掛けるグーグルやフェイスブックは捕捉が困難とされてきた。

ただFTCのチョプラ委員は9日、ジョージワシントン大での講演で「消費者にタダで製品を提供しても、その裏で競合企業を排除するような動きがあれば問題だ」と明言した。フェイスブックに対しては写真共有の「インスタグラム」など過去の企業買収がライバル排除狙いだったと複数の専門家が指摘している。

チョプラ委員はアップルについても「スマートフォンアプリを扱うアップストアが本当に皆にオープンな場なのか注視している」と述べた。産業のデジタル化を受け、反トラスト法の解釈は急激にかわりつつある。

調査には数年単位の時間がかかるとされるが、それでもグーグルやフェイスブックにとっては調査に応じるための負担が生じる。グーグルのケント・ウォーカー法務担当副社長は6日「司法省からプラットフォーマーへの調査に関して情報提供を求められている。州の司法当局からも同様の要請が来ると想定している」との声明を出した。

16年の米大統領選でロシアの介入を許して以来、IT大手への批判は高まり続けている。20年にはカリフォルニア州で個人情報の保護規制が施行されるなど、規制強化の議論も始まった。イノベーションの担い手としてオバマ前政権の後押しも強かったGAFAだが、風向きは確実にかわりつつある。

(ワシントン=鳳山太成、中西豊紀)

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