せかい旬景 大学都市の「青空」古書店(ボストン)

コラム(国際)
2019/9/14 2:00
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ブラットル書店の屋外売り場。晴天時には商品を満載したカートも出され、空き地全体が売り場になる(米ボストン)=三村幸作撮影

ブラットル書店の屋外売り場。晴天時には商品を満載したカートも出され、空き地全体が売り場になる(米ボストン)=三村幸作撮影

米東海岸のボストン。地下鉄駅に向かおうと通りを歩いていると、レンガ造りのビルに囲まれた空き地に書棚が並ぶ異様な光景が目に入った。書棚には「会計は店内へ」と表示があり、観光客らしき人たちも書棚に吸い寄せられては本を手に隣接する建物に入っていく。見上げると「ブラットル書店」の看板が掲げられており、ようやく古書店の屋外売り場だということが理解できた。

革表紙の年代物も並ぶ陳列棚。「お会計は店内へ」の表示が貼られていた

革表紙の年代物も並ぶ陳列棚。「お会計は店内へ」の表示が貼られていた

幼い頃から店を手伝い、本に囲まれて育った店主のケン・グロスさん

幼い頃から店を手伝い、本に囲まれて育った店主のケン・グロスさん

同店は1825年創業で老舗中の老舗だ。店主のケン・グロスさん(69)が話を聞かせてくれた。

売り上げの大部分を占めるという屋外売り場のきっかけは1980年。火災で木造5階建ての旧店舗を焼失したことだった。失意の中、先代の父と再建を志すと噂を聞きつけた市民から多くの本が寄せられた。その数千冊もの本を跡地に並べたのが始まりだという。「開発業者の勧めを断って、そのまま売り場として活用しているよ」とグロスさん。以来、店のよい看板となり、通りがかりの人たちも足を止めるようになったのだという。今では貴重な史料や地図など約25万冊の蔵書を抱え、多くのお客でにぎわう元の姿を取り戻した。

熱心に品定めをする

熱心に品定めをする

壁面の書棚には屋根が取り付けられていた

壁面の書棚には屋根が取り付けられていた

ボストンは周辺にハーバード大やマサチューセッツ工科大など世界的にも指折りの大学がある「大学都市」。店舗周辺にも学生寮が立ち並ぶが、インターネットや電子書籍の影響か「だれも辞書や百科事典を買わなくなった」とグロスさんは寂しげ。「それでも存在さえ知らなかった本との出合いを求めてお客さんは何度も足を運んでくれる」と言う。3階建ての古いインクと紙の匂いが漂う店内でネット検索でもたどり着けない世界は健在だと再認識した。

(写真映像部 柏原敬樹)

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