文氏、疑惑の側近を法相任命 保守との対立必至

2019/9/9 20:18
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【ソウル=恩地洋介】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は9日、娘の進学などを巡る不正疑惑が取り沙汰される側近の曺国(チョ・グク)前民情首席秘書官の法相任命を強行した。世論の反発は必至だが、肝煎りの検察改革に賛同する革新系勢力の支持を優先した。抵抗する検察や保守勢力との対立は強まり、文政権の日本への強硬姿勢も続く見通しだ。

「明確な違法行為が確認されていないのに、疑惑だけで任命しなければ悪い先例になる」。文氏は9日、大統領府で開いた閣僚任命状の授与式で異例の国民向け談話を読み上げた。「ややもすれば国民分裂につながる恐れもある状況で、深く悩まざるを得なかった」とも語り、熟慮の判断だったことをうかがわせた。

曺国氏は一連の疑惑について自身の関与を否定してきた。しかし、6日の国会の聴聞会は休憩を挟んで約14時間続き、野党議員の追及を受けた。同日夜には検察が曺氏の妻を私文書偽造罪で電撃的に在宅起訴した。

検察が捜査を進めるなかで、法相人事を強行すれば世論の反発は避けられない。一方で任命を断念すれば保守勢力を勢いづかせ、自らの求心力の低下を招く。

最終的に文氏は側近の曺国氏を法相に起用し、「本丸」と位置づける検察改革を断行する道を選んだ。改革案は政治権力の影響を受けやすい検察が独占する捜査権の一部を警察に委譲する内容だ。文氏は談話で「権力機関の政治的中立を法制度として完成させる」と述べた。

組織防衛に走る検察は全面対決の構えをみせる。曺国氏の妻の起訴に続き、9日には疑惑の私募ファンドに関わる投資会社代表の逮捕令状を請求した。捜査対象が曺国氏にまで及べば、法相とその指揮下の検察が対立する異例の事態になる。

世論は割れている。調査会社リアルメーターが9日発表した世論調査では、曺国氏の任命に反対の比率は52%で、賛成の45%を上回った。ただ熱烈な政権支持層に限ってみれば9割超が賛成しており、身内の求心力を高める効果はある。

無党派層の不信が文政権に向かう可能性は否定できない。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾の原動力となったのは、既得権層に反発する若者らだった。6日には革新系紙ハンギョレの若手記者31人が、曺国氏擁護の論調を巡り編集局長の辞任を促す声明を出した。

韓国ギャラップの6日の世論調査で、文氏の支持率は43%と不支持率(49%)との差が開いた。文氏を支える「共に民主党」は過半数に満たない少数与党だ。2020年4月の総選挙では、重要法案を可決できる5分の3の勢力を確保できるかどうかが焦点となる。総選挙まで7カ月と迫り、革新と保守の対立が激しさを増すのは必至だ。

与党が敗北すれば文氏の求心力が低下し、22年の任期までレームダック(死に体)に陥る可能性は否定できない。保守系最大野党の自由韓国党は9日に談話を発表し「大統領が閣僚の任命権を乱用、悪用した」と対決姿勢を強調した。ただ、分裂状態にある保守政党が勢力を再結集する道筋は描けていない。

文氏は保守をたたき、革新をまとめる手段として「親日清算」などの過激なスローガンまで用いてきた。韓国の親日は植民地時代に朝鮮半島を統治した日本と結びついた勢力を意味する。こうした文脈からも歴史問題などで日本への強硬姿勢が続く公算は大きい。

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