平和条約交渉、INF条約失効も懸案に 安保問題で日ロ次官級協議
森健良外務審議官とロシアのモルグロフ外務次官は9日、都内で約4時間会談した。両国が抱える安全保障上の課題を中心に意見交換した。ロシアは米国が中距離核戦力(INF)廃棄条約の失効を受けて検討する中距離ミサイルのアジア配備に反発しており、北方領土問題を含む平和条約交渉の懸案になりつつある。
外務省関係者は次官級協議終了後、「日ロが日ごろから提起する安保上の課題について話し合った」と語った。ロシアが問題視するINF廃棄条約の失効を踏まえた中距離ミサイルの配備や、米国製の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の日本での展開計画を協議したとみられる。次回の外相会談の日程も調整した。
エスパー米国防長官はINF廃棄条約が8月2日に失効した直後、地上配備型の中距離ミサイルをアジアに配備することに言及した。日本政府内では中距離ミサイルの配備問題について「平和条約交渉を進めるうえで懸案が増えた」と警戒する声があがる。
平和条約交渉に関連し、ロシアのペスコフ大統領報道官は8日のロシア国営テレビの番組で「(日本側の)期待が高まりすぎている」とけん制した。「重大な問題解決の糸口の発見は相互信頼に基づいてのみ可能になる」と安保上の懸念などの解消を求めた。
プーチン大統領は5日の東方経済フォーラムの会合で、米国の中距離ミサイルのアジア配備について「大きな脅威だ」との見解を示した。安倍晋三首相はその場で「米国から打診も予定もない」と否定したものの、プーチン氏は「国防総省のトップは日韓と話し合いを続けていると話した」と不信感を示した。
ロシア側は日本との平和条約交渉をめぐり、日米の東アジアでの安保協力が障害になるとの立場を再三訴えてきた。外相や外務次官級の交渉では、イージス・アショアの日本への配備計画を重ねて批判している。