三角屋根 住宅街シンボルに(古今東西万博考)
1970年・大阪 カンボジア館

関西タイムライン
コラム(地域)
2019/9/10 7:00
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標高316メートルの地点にある神戸電鉄有馬線の山の街駅(神戸市北区)。駅前から、国道を挟んで山の斜面に広がる同区広陵町の住宅地を見渡すと、強烈なインパクトを放つオレンジ色の建築物が目に飛び込んでくる。

神戸市北区広陵町に移設された「カンボジア館」

神戸市北区広陵町に移設された「カンボジア館」

高さ約12メートルの鋭角な三角屋根が特徴の建物は、1970年の大阪万博で「カンボジア館」として使われた。閉幕後に住宅関連会社が引き取って71年に移設。宅地分譲のPR材料にする一方で集会所として住民が利用できるようにし、92年に広陵町自治会に寄贈した。

広さは約260平方メートルあり、自治会のイベントのほか、卓球、剣道、社交ダンスなどを楽しむ人らで連日にぎわう。「住民は親しみを込めて『パビリオン』と呼ぶ。稼働率は80%に達するのでは」と自治会の田中収会長(70)。カンボジアとの交流も盛んで、毎年11月に開く文化祭では同国の留学生を招いたり、子どもらが描いた絵を建物に飾ったりしている。

近年は老朽化も目立ち、数年前には取り壊しの話も持ち上がった。しかし、研究者らの調査でカンボジアの著名な建築家が手掛け、本国でも希少なデザインであることが判明。カンボジア大使館も存続を訴えた。「住民にとって当たり前の存在だった集会所の価値を再認識するきっかけになった」と田中会長。自治会の積立金などで補修することに決め、2017年に約2600万円をかけて屋根瓦や床を交換するなどした。

田中さんはカンボジア館について「地域住民を束ねる力であり、カンボジアとの友好のシンボルでもある」と話す。万博の貴重なレガシーを後世に残すため、今後は文化財としての登録を目指していくという。

(江口博文)

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