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債券バブルの終わりは経済好転 金利急騰リスクも

米中貿易摩擦による世界経済減速シナリオにより、株が売られて債券が買われ、その結果世界的に金利が記録的水準まで下落中だ。とはいえ債券の4分の1がマイナス金利という異常な事態に発展すると、さすがに市場では「債券バブル過熱」との反省感もジワリ醸成されつつある。

ヘッジファンドのなかには、債券ショート(売り)の動きも出始めた。債券買いバブルの終わりは「金利急騰」との読みだ。

先週5日には米国債の利回りが急反発した。米10年債利回りが1.56%、同2年債が1.53%と前日比でそれぞれ0.1%上昇(価格は下落)した。米中対話再開をはやした動きだが、数年ぶりとされる下げ幅ゆえに債券バブル終焉の「予告編」とも見えた。債券の買い手も、あくなきイールド(利回り)を追求する長期投資家と、短期の売買益を追求する投機筋とで二極化している。

後者のバブル的な買いっぷりが、世界的な金利下落傾向を増幅させていることは間違いない。しかし、この人たちは債券を満期まで持ち続ける気はさらさらない。そもそも、最近の市場は悪材料に注目する傾向が顕著だ。

6日発表された8月の米雇用統計にしても、非農業部門新規雇用者の増加数が13万人で市場予測を下回ったことが材料視された。しかし、賃金は前年同月比で3.2%増、労働参加率も63.2%へ上昇したように改善もみられる。

米サプライマネジメント協会(ISM)の景況感指数にしても、製造業は49.1まで低下したが、非製造業は56.4へ上昇している。小売売上高も7月まで5か月連続で増加しており、消費は底堅い。

6日にはスイス・チューリヒでパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演もあった。これまでの主張を繰り返す内容であったが、市場は「9月利下げ示唆」と受けとめている。しかし、米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバー内では、実務家出身のパウエル氏が地区連銀総裁の論客たちに振り回され、意見をまとめるのに難渋している。

トランプ米大統領から「中国と並ぶ敵」扱いされていることをチューリヒでも問われたが、確答は避け「我々は職務を粛々と実行するのみ」と語っている。米中通商問題は「FRBとして未体験の分野で知見が十分ではない」と開き直った感さえ漂う。

今後、マクロ経済データの改善が顕著になれば、利下げの可能性が低下するシナリオも実は厳然と残っている。しかし市場は先走り気味だ。

振り返れば、パウエル氏が率いるFRBの金融政策は短期間で引き締めから緩和へ劇的に転換した。今後事態が急変すれば、「データ次第」で劇的な再転換があっても不思議ではない。これが「柔軟」という言葉を好むパウエル流だ。

このような経済・市場環境では、最大のリスクが経済の好転、地政学的要因の後退なのだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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