京急、運転再開も残る不安 交通規制や対策求める声 - 日本経済新聞
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京急、運転再開も残る不安 交通規制や対策求める声

横浜市神奈川区の京急線の踏切で快特電車がトラックと衝突した事故で7日午後、不通だった京急川崎―横浜間の運行が2日ぶりに再開したが、現場周辺の住民や乗客の不安は消えていない。トラックが進入した側道は大型車の規制などがなく「立ち往生が再び起きるのでは」と危惧する声や、衝突を避けられなかった京急の安全対策を懸念する意見も出ている。

事故は5日午前11時40分ごろ発生し、快特電車の先頭から3両目までの車両が脱線した。夜通しで撤去作業が行われ、7日未明にクレーンで先頭車両をつり上げて線路に戻し、多くの作業員が押して近くの車両基地に移動した。正午すぎから試運転で安全を確認し、午後1時13分に運行を再開した。事故現場の最高時速は120キロだが、当面は徐行運転を行う。

7日午後1時半ごろ、現場の「神奈川新町第1踏切」の警報が鳴り、運行再開後初めての電車が通過した。最寄りの神奈川新町駅では「いつも通りの暮らしに戻れる」(20代女性)といった安堵の声が聞かれた一方、「トラックが進入した側道の状況や構造は変わっていない」と複雑な表情を浮かべる住民も少なくなかった。

事故で死亡した本橋道雄運転手(67)は横浜市から千葉県へ果物を運ぶ途中で道を間違ったとみられ、線路沿いの狭い側道を進んだ。側道の道幅は約3.7メートル。捜査関係者によると、全長約12メートルのトラックが左右どちらにも曲がるのは難しい状況だったが、強引に右折して踏切内で立ち往生したとみられる。

側道は大型車の進入や右折の規制はなく、住民によると過去にも大型車が曲がれずにバックで戻ることがあったという。県警幹部は「規制がない詳細な理由は分からない」と話すが、近くに住む60代主婦らは「大型車の通行を規制しなければ、また事故が起きかねない」と訴える。

一方、トラックが立ち往生した踏切では「障害物検知装置」が作動した。踏切の手前に3カ所あり、危険を知らせる点滅信号も正常に機能した。3カ所のうち最も手前の信号は踏切の600メートル前で目視できる。この段階で運転士がブレーキをかければ、120キロで走行中でも踏切までに停止できる設計だったが、今回は間に合わなかった。

利用者の間では「踏切で異常があれば確実に電車が止まれるようにしてほしい」(50代女性)と安全対策の徹底を求める声が多い。運転士のブレーキ操作や信号の位置が適切だったかどうかについて、県警や国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官が調べている。

関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「京急は事故を避けられなかった原因の検証を急ぐべきだが、踏切事故を減らすには鉄道会社の対応だけでは限界がある。踏切への無理な進入を防ぐ交通規制やドライバーへの教育の徹底などの幅広い対策が必要だ」と指摘している。

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