米雇用、8月は13万人増に減速 貿易戦争が下押し

貿易摩擦
2019/9/6 21:32
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【ワシントン=河浪武史】米労働省が6日発表した8月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比13万人増にとどまった。伸びは市場予測(16万人程度)を下回り、前月(15万9千人)と比べても減速した。貿易戦争で製造業を中心に雇用環境に逆風が吹いており、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ局面が長期化する可能性もある。

8月の失業率は3.7%と前月から変わらず、およそ半世紀ぶりの低水準をほぼ保っている。平均時給は28.11ドルと前年同月比3.2%増え、13カ月連続で3%台の伸びを維持した。

もっとも、就業者の伸びは鈍化してきた。直近3カ月の増加幅は月平均15万6千人と、2018年の同22万3千人から大きく減速した。19年1~8月でみても同15万8千人にとどまり、労働市場の拡大は少しずつブレーキがかかりつつある。

中でもトランプ米大統領がこだわる製造業は、19年1~8月の就業者の増加幅が月平均6千人にとどまり、18年の2万2千人から大幅に鈍化している。中国との貿易戦争などで、4~6月期は輸出や設備投資が前期比マイナスに転落。製造業の景況感指数も8月には3年ぶりに好不況の境目である50を下回り、雇用に下押し圧力がかかる。

労働力の吸収源だった小売業も、7カ月連続で就業者数が減少した。百貨店など一般量販店の雇用は8月だけで1万5千人減り、1~8月で合計8万人も縮小した。ネット通販の台頭で小売業はリストラが相次いでおり、構造的に雇用が増えにくくなっている。

FRBは7月に政策金利を0.25%引き下げ、10年半ぶりの利下げに踏み切った。米景気は拡大局面が11年目に突入したばかりだが、貿易戦争で企業投資が鈍化するなど先行き不安が強い。パウエル議長は「利下げは世界景気の減速と貿易政策の下振れリスクへの備えとなる」と「予防的利下げ」の意義を説いた。

焦点は先行きの追加緩和シナリオだ。パウエル議長は7月の利下げを「政策のサイクル半ばの調整」と表現し、長期的な利下げ局面入りを否定した。ただ、8月にはトランプ氏が中国への制裁関税「第4弾」を発動すると表明。景況感の悪化を受けて、9月17~18日の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを決める可能性が大きくなっている。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は4日の講演で「経済の不確実性は非常に高まってきた」と強い懸念を示した。米中の貿易戦争だけでなく、英国の欧州連合(EU)離脱やイタリアの政局混乱などを取り上げて「長期の経済見通しに影響を与える」と指摘。利下げ局面が想定よりも長引く可能性をにじませた。

先物市場では、FRBが9月に0.25%の利下げに踏み切るとの観測が96%に達する。年末までにさらに1回以上の追加緩和があるとの観測も82%に上り、市場はパウエル議長が指摘するような「政策のサイクル半ばでの調整」にとどまらないとみる。米10年物国債利回りは1.5%台と政策金利(2.00~2.25%)を大きく下回ったままで、利下げ催促相場の様相は変わらない。

もっとも貿易戦争に端を発した景気不安は、金融緩和で解消できるものではない。トランプ氏は「FRBの動きは鈍い」とパウエル議長を批判し続けるが、FRBのジレンマは強まるばかりだ。

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