2019年9月18日(水)

海を渡る「お値打ち感」 物語コーポ、アジア浸透狙う
ナゴヤの名企業 新戦国時代 第3部 外食(3)

サービス・食品
中部
2019/9/11 6:30
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「まだ焼けていません。食べないでください」

物語コーポレーションの主力業態「焼肉きんぐ」の店内では、赤い腕章をつけた「焼肉ポリス」が目を光らせる。火力・焼く位置などに精通した従業員が店内を歩き回り、顧客が多少嫌な顔をしようとも、メニューごとの適切な調理法を指導する。

同社名物の「おせっかい」な接客で、物語コーポはこうしたサービスに力を入れる。サービス、価格、量、質を消費者が総合的に評価した結果得られる「お値打ち感」がある。

「家族4人、1万円で満腹になる」

「焼肉きんぐ花田店」(愛知県豊橋市)は平日でも夜は家族連れでにぎわう。制限時間100分の焼き肉食べ放題を提供しており、なるべく多く食べようと親子の笑みがあふれる。

1号店の出店から10年余りで焼肉きんぐの店舗数は200を超えた

1号店の出店から10年余りで焼肉きんぐの店舗数は200を超えた

同社の焼き肉食べ放題は2680円(税抜き)から。競合する企業と価格は拮抗するが、注文から全品4分以内に提供される点を強みとして強調している。時間稼ぎをしない姿勢を消費者が支持し、2007年に1号店を出した「焼肉きんぐ」は急成長した。16年には全都道府県に進出し、今年6月末時点では223店を運営する。08年の上場以来12期連続で最高益を更新している。

お値打ち感実現のためにまずこだわったのはコストの圧縮だ。調理や注文を徹底的に合理化する「カイゼン」を厨房に持ち込んだ。キッチンの設計では従業員が手を伸ばすだけで調理器具がとれるようにし、決められた位置にいれば歩き回ることなく作業が可能だ。

全店に設置されたタッチパネルを通じて注文してもらい、各テーブルにディスプレーを設けることで待ち時間を減らす。

物語コーポレーションは2008年の上場以来12期連続で最高益を更新している

物語コーポレーションは2008年の上場以来12期連続で最高益を更新している

コスト削減だけではない。来店客に割安であると感じてもらうには、商品の質にもこだわる必要がある。焼き肉きんぐで使う肉は真空状態で30日以上熟成させている。長期間熟成させることで柔らかくなるほかうまみ成分も増すという。カビをつけ熟成させる方法に比べ衛生的でもある。

焼き肉で磨いてきたお値打ち感を次は中国で広げようとしている。

9月中に焼き肉丼を提供する新業態を上海市の人民広場付近に開く考えだ。中心となる価格は50元(約750円)程度と現地資本の競合他社と同水準に抑えた。日本の焼き肉の味を手ごろな価格で提供することで若者や家族連れなど幅広い顧客をひき付ける。配達や持ち帰りのニーズにも対応する。

これまで、物語コーポは中国でカニ料理店「蟹の岡田屋総本店」という高級店を展開してきた。日本らしさを押し出した店舗が富裕層の心をつかみ、単価は500元(約7500円)に上る。しかし、長期にわたり事業を拡大して行くには「毎日食べられるような安価な業態で、より広い層にアプローチする必要がある」(加治幸夫社長)と判断した。

18年には海外展開を加速するためアジア地域を統括する新会社を設立した。東南アジアなどへの出店も見据える。名古屋人が重視する「お値打ち感」が広がり、アジアを席巻する日は訪れるのか。物語コーポの成否が1つの試金石になりそうだ。

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