2019年9月19日(木)

ラグビーW杯支える 2層の芝 聖地・花園の生育術
匠と巧

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コラム(地域)
関西
2019/9/9 7:01
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20日のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会開幕まで11日。会場の東大阪市花園ラグビー場(大阪府東大阪市)では着実に芝の整備が進んでいる。

天候や芝の状態を確認しながら水をまく=目良友樹撮影

天候や芝の状態を確認しながら水をまく=目良友樹撮影

花園では夏芝の上から冬芝の種をまいて育てる「オーバーシード」という方式を採っている。夏芝は地中の茎が横に伸びる特徴を持つ。四方八方にびっしりと張り巡らされた茎に冬芝の根を絡ませることで、スクラムなどで強い負荷がかかっても芝がはがれにくいようにしている。

タキイ種苗(京都市)の協力で使う冬芝は、ペレニアルライグラスという西洋芝の一種の「アスリート4X」。踏みつけに強く、米プロフットボールNFLの競技場でも使われているという。夏芝に使うのは繁殖力が高く、擦り切れに強い「ティフトン419」。これらの芝を根付かせる床土には、排水性が高い青森砂を採用している。

通常は5月中旬から6月初旬にかけて冬芝を8ミリの長さに刈り、根を抜いて床土をほぐす。やがて"冬眠"していた夏芝が発芽。9月の1週目に夏芝を8~10ミリに刈り、隙間に冬芝の種をまく。夏芝に取って代わって冬芝が伸び、シーズン開幕時には鮮やかな緑のじゅうたんができあがる。

ただ、このスケジュールは関西ラグビー界が慣例としてきた10月初旬のシーズンインに合わせたもの。近年は花園でのW杯初戦(イタリア―ナミビア)が行われる9月22日に照準を合わせて様々な工程を前倒ししてきたが、今年の作業は壁にぶつかる連続だった。

まずは天候不順。花園の芝を受託管理する近鉄レジャーサービス(三重県志摩市)花園営業所のグラウンドキーパー、唐仁原(とうじんばら)幸一さんは「夏芝をいかに強く育てるか」を重視するが、長雨と日照不足が続いた今夏は、冬芝の生育に必要な夏芝のベースが思ったほどできあがっていない。やはり多雨のため「冬芝が全滅した」2016年と18年の苦い経験が思い出される。

今年は8月3日に国際大会の日本―トンガ、10日にはトップリーグカップ決勝が花園で行われ、生育作業を約3週間も止めざるを得なかったことも響いた。

逆境をどう乗り越えるか。夏芝のベースが当てにできない中で唐仁原さんが思いついたのが、冬芝の根を強くすること。あえて夏芝の成長を止める薬剤をまき、冬芝の生育を促すため成分を変えた肥料を使用。日本―トンガ戦の前には普段は使わない土壌改良剤も投入した。世界のラグビーファンに「花園の芝、ここにあり」と示したい思いと経験値が生んだ打開策だ。

大会関係者が昨年実施した芝の調査で花園は95点の高得点を獲得、今夏の簡易調査でも「合格」の評価を得た。生育技術の高さを裏付ける結果だが、この先の天候不良に備えて引き続き「先手、先手で対応していかないと」と唐仁原さん。4試合が組まれた花園での最終戦(10月13日、米国―トンガ)まで、日本代表と同じく最高の準備を続けるつもりだ。

(合六謙二)

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