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「風邪」の抗菌薬処方に大きな地域差 協会けんぽ調査

日経メディカル Online

全国健康保険協会(協会けんぽ)は、全国約4000万人いる加入者のレセプト(診療報酬明細書)データなどを活用し、急性上気道炎(いわゆる「かぜ症候群」)に対する抗菌薬の処方割合が毎年減少していることを明らかにした。ただし、地域差は大きく、2人に1人に処方されている都道府県がある一方で、4人に1程度の処方にとどまっている都道府県も存在していた。

また、急性上気道炎に対して抗菌薬投与を検討する場合に厚労省が推奨しているアモキシシリンの処方割合にも大きな地域差が存在することも明らかになった。

協会けんぽは、今回明らかになった抗菌薬使用における地域差が今後どうなるか使用動向に注視していく考えだ。

今回の解析は、協会けんぽが2018年4月に策定した「保険者機能強化アクションプラン(第4期)」に沿ったもの。医療費適正化などのための情報発信を目的に、都道府県単位(支部ごと)の地域差を解析した。今回は、抗菌薬の使用状況、人工透析、診療時間外受診の3つをテーマに地域差を解析しているが、今後、異なるテーマでも調査を実施する計画だ。

急性上気道炎に対する抗菌薬の使用状況は、全加入者の16年6月~18年5月受付レセプト(一部15年6月~19年5月)の中で「急性上気道炎」の疾病名(疑いは除く)が存在するレセプトを対象に解析した。

急性上気道炎に対する抗菌薬使用は、15年度には43.6%だったが、年々減少し、18年度は31.4%となっていた。

抗菌薬の適正使用として、厚労省は16年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を策定。また、厚労省は17年6月に、風邪に対して抗菌薬処方は不要とする『抗微生物薬適正使用の手引き』(以下、手引き)を公開している。

このような動きが今回の処方割合の減少に影響したものと、協会けんぽは分析している。今回の結果は、国内における抗菌薬販売量の減少とも相関するものだ。

今回、協会けんぽは、細菌検査(A群β溶連菌迅速試験)の実施状況と抗菌薬処方の関連も解析している。その結果、検査の実施割合が高い地域ほど抗菌薬の使用割合が低いという相関(相関係数R=-0.485)も確認した。ただし、溶連菌の迅速試験の実施は全体的に少なく、高い地域でも6%程度に留まっていたという。

このように抗菌薬の使用割合が全国的に減少してきているものの、地域差が残っていることも明らかになった。最も使用割合が大きい奈良県(48.9%)と、最も低い福井県(26.6%)では22.3ポイントの差があった。ちなみに、抗菌薬の処方割合は、奈良県に次いで、宮崎県(47.6%)、和歌山県(46.6%)が多かった。一方、福井県に次いで北海道(30.0%)、沖縄県(30.9%)の処方割合が少なかった。

処方する抗菌薬の種類にも差が見られた。手引きでは、急性気道感染症に対して抗菌薬投与を検討する場合はアモキシシリンを推奨しているが、アモキシシリンの処方率が最も高い沖縄の24.6%に比べて、最も低い徳島県では2.8%となっていた。

(日経メディカル 小板橋律子)

[日経メディカル Online 2019年9月5日掲載]

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