日韓対立が北陸経済に影 不買拡大警戒、調達切り替えも

2019/9/6 6:00
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日韓関係の悪化が北陸企業の経済活動や観光交流に影を落とし始めた。韓国での不買運動の広がりによる売り上げ減少や輸出規制の応酬などへの警戒感が高まり、リスク回避に動く企業も出てきた。観光面では韓国への直行便の運休により訪日客の減少を懸念する声が上がる。長年続いてきた自治体同士の交流取りやめも相次いでいる。

LCCのエアソウルは富山―ソウル便を16日から運休する

LCCのエアソウルは富山―ソウル便を16日から運休する

「韓国の美容室でうちの製品を使っているという店頭表示をやめる店が相次いでいる」。化学メーカー、日華化学の江守康昌社長は7月に開いた2019年1~6月期の決算会見でこう危機感を示した。

同社は現地子会社のデミコリアでヘアカラー剤やシャンプーやトリートメントなどの自社製品を販売。業務用シャンプーのシェアでは韓国内で5本の指に入るといい、同国での売上高は年2割のペースで伸びていた。不買運動の広がりに神経をとがらせる。

韓国を含む化粧品販売事業の19年12月通期の売上高見通しは115億円で、当初予想よりも5億円の減収となりそうだ。江守社長は「今までにも日韓関係悪化による影響がなかったわけではないが、今回は長引く可能性がある」と語る。

三光合成では両国間で今後、輸出規制が拡大する懸念もあるとして、国内の金型製造の子会社で順次、原材料の鋼材の調達先を韓国から台湾に切り替え始めた。

台湾メーカーの鋼材は価格面でも品質面でも韓国メーカーと同等。現時点で韓国産の鋼材の調達に支障が出ているわけではないが「顧客への安定供給に向けてリスクを少しでも抑える」(黒田健宗社長)狙いだ。

衣料向けの透湿防水フィルムを韓国に輸出している染色加工のテックワン(石川県能美市)の竹田忠彦社長は「今月末、不買運動の広がりを調べるために、韓国に視察に行く」と語る。

「(直接消費者が購入する商品ではなく)今のところ影響はないが、輸出規制などで両国の経済が冷え込めば輸出の減少は避けられない」(竹田社長)。韓国向けの減少も見据え、国内市場での介護用ベッドの拡販などに力を入れ始めた。

北陸3県の輸出額に占める韓国向けの比率はおおむね2割を占める。19年上半期(1~6月)の輸出額は402億円と前年同期比14%減った。

富山では半導体などの製造装置、石川では偏光板などの科学光学機器、福井ではガラス関連の輸出減が目立った。全体の輸出額に占める韓国向けの割合は前年同期に比べて1ポイント低下した。

観光・交流に波及

対立の影響は観光や文化交流の分野にも出ている。9月以降、韓国と北陸を結ぶ直行便の休止が相次いで予定されている。富山空港(富山市)では、格安航空会社(LCC)、エアソウルの富山―ソウル便の運航が16日に停止される。

18年度の富山―ソウル便の利用者は3万62人で、前年度比18.3%増。富山では18年の延べ宿泊者数に占める韓国人の割合が11%と石川(4%)、福井(5%)を大きく上回り、訪日客の減少による影響は大きい。

富山県有数の観光地、立山黒部アルペンルートの担当者は7月以降、韓国からの観光客が団体客のキャンセルもあり前年を割っているとしたうえで、「ソウル便が来なくなることで紅葉シーズンへの影響を懸念している」と語る。

金沢市と全州市は交流事業を延期した(写真は昨年の金沢市での伝統工芸展の様子)

金沢市と全州市は交流事業を延期した(写真は昨年の金沢市での伝統工芸展の様子)

小松空港(石川県小松市)でも、大韓航空が週3往復運航しているソウル便を9月末から11月中旬まで運休する。石川県によると同路線の利用者は日本人が約4割を占める。谷本正憲知事は「関西や名古屋経由で宿泊もしなければならず、ビジネス利用客にとっては大変な損失になる」と懸念する。

福井市は友好都市の水原市と毎年秋に行ってきた市立美術館での小中学生の作品交流を今年は取りやめる。水原市の担当者から「日韓情勢により、今年は作品を送るのも、展示するのも難しい」と同市に連絡があった。

金沢市議会は10月に予定していた姉妹都市の全州市への訪問団派遣を11年ぶりに中止する。島根県・竹島の領有権を巡って日韓関係が悪化した08年以来。全州市議会側から中止を求める連絡があった。両市間ではすでに、8月末から全州市で予定していた金沢伝統工芸展も延期している。

関係改善が現状では見通せないなか、地域経済や民間レベルでの交流にも影響がさらに広がることが懸念される。

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