米景況悪化「製造・農業」で顕著 貿易戦争で疲弊

米中衝突
2019/9/5 17:40
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【ニューヨーク=大島有美子】中国との貿易戦争が米国の経済を疲弊させつつある。米連邦準備理事会(FRB)は4日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で米経済が「緩やかに拡大している」と総括したが、各地区の報告からは8月以降の米中の報復関税の応酬により製造業や農業の活動が鈍り始めていることが浮き彫りになった。

米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に注目が集まる(ワシントン)=ロイター

今回のベージュブックは7月中旬から8月23日までの全米12地区の経済情勢をまとめたもの。9月17~18日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けた準備資料として重視されている。トランプ米大統領は8月1日、中国からの輸入品ほぼ全てに追加関税を課す「第4弾」の発動を表明。報告書には発表を受けた経済活動の現場の反応が盛り込まれた。

「7月の報告と比べ企業活動全体が衰えている」(アトランタ)。顕著に減速の動きをみせたのが製造業だ。製造業では12地区のうち半数超の7地区で「減速」の表現が盛り込まれたほか、貿易戦争に起因する減速と明示した地区もクリーブランドやカンザスシティーなど4地区に上った。

バージニア州の製造業は「事業環境の悪化の恐れから、新しい設備の購入を先送りした」。企業活動と密接に連動する輸送業も「最近数週間はゆるやかに仕事が減っている」(ニューヨーク州)。4日講演したニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は「企業経営者が投資により慎重になっていると話しており、すでに設備投資の数字にも表れている」と述べた。

8月の米製造業景況感指数は49.1と好不況の境目である50を3年ぶりに割り込んだ。報告でも「世界経済の成長期待が剥落し、先行きはより悲観的」(ダラス)との声が漏れる。9月の追加関税発動や中国による報復関税など8月下旬以降に起きた事象は報告書に盛り込まれておらず、足元の企業活動はより弱まっている可能性がある。

報告書では製造業、農業、輸送業で減速が目立つ一方、消費や雇用、住宅が底堅さを維持し、景気全体を支える構図だった。ただ「一部は関税による値上げが影響し、8月初旬の販売が落ち込んだ」(ニューヨーク)、「消費者心理は悪化している」(フィラデルフィア)など小売業の現場からは不安の声が寄せられた。制裁関税によるコスト増も重い。「制裁関税の影響で将来の輸入コストが上がる」(クリーブランド)など懸念の声が上がる。

貿易戦争の長期化を見越して、事業戦略を変更する動きも出始めた。ある電気設備会社は「メキシコへの生産移転をやめ米国に自動化投資する」(ボストン)。農業分野でも「牛、豚、鶏肉の畜産農家で(中国を)代替できる市場を探している」(サンフランシスコ)という。

景気減速への懸念から米債券市場では9月の利下げ確率を100%とみているが、利下げ幅の内訳では0.5%とみる確率が4日、1割に高まった。3日時点では4%だった。17~18日に開かれるFOMCにおける利下げ幅の拡大の期待が高まっている。

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