新たな人生への決意彩る花嫁のれん(石川県七尾市など)
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2019/9/6 6:00
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花嫁が婚礼の日、嫁ぎ先の仏間の入り口にかけられたのれんをくぐり、仏壇の前でご先祖にお参りをする。いったんのれんをくぐれば、嫁ぎ先の嫁として新たな人生が始まる。「もう戻ることはできない」。花嫁のれんは、祝いの日に隠された花嫁の決意を彩る。

時代を追って豪華さが増し、松竹梅など吉祥柄が好まれる

時代を追って豪華さが増し、松竹梅など吉祥柄が好まれる

花嫁のれんは加賀藩の領地だった能登、加賀、越中で、江戸時代の末期から明治時代にかけて始まり、現在にまで伝わる風習だ。のれんは花嫁の実家が娘のために用意し、家紋を入れるのが流儀。娘はのれんをくぐる直前に実家の家紋を目の当たりにし、婚家へと足を踏み入れていく。

明治時代から昭和初期まで、のれんに使われる色は青や紫が主流。当初はのれんも家紋1つに三幅と細めで、比較的地味な見栄え。布地も木綿や麻だった。

昭和に入ると次第に赤い色が使われ、布地に絹が採り入れられた。昭和30年代ごろには華やかさが増し、家紋2つに四幅、五幅と横幅が広がったほか、家紋の周りを丸く囲む花紋を施すことも目立ってきた。のれんに描かれるのは鶴亀や松竹梅といった吉祥柄やオシドリなどが好まれ、最近では多くの品で加賀友禅の手法が用いられている。

花嫁のれんは、嫁入りの際の一連の風習を意味する言葉でもある。その一つが「合わせ水」。花嫁と花婿の両家からそれぞれくんできた水を、仲人がカワラケという杯に注ぎ、花嫁が飲む。その後、仲人がカワラケを地面にたたきつけて割るもので、割れた杯になぞらえて「もう元には戻らない」ことを願うという。

花嫁のれんは、結婚式が済むとタンスの奥にしまい込まれ、二度とかけられることがないものだった。それではもったいないと動き出したのは石川県七尾市の人たち。2004年から市内の一本杉通りの商店や民家に、実際に使われた花嫁のれんの展示を始めた。

期間は毎年4月29日の昭和の日から5月第2日曜日の母の日まで。百数十枚に及ぶのれんは、大型連休中の誘客に一役買っている。また、16年4月には常設の「花嫁のれん館」が開業。明治から平成まで時代ごとの移り変わりをみることができる。予約すれば、白無垢(むく)か打ち掛けを着て、花嫁のれんをくぐる体験も受け付けている。

(沢田勝)

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