8K映像で「微小外科手術」、直径0.1ミリの血管つなぐ

2019/9/5 13:04
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8K手術用ビデオ顕微鏡システム「Micro eight」を利用し、ラットのマイクロサージャリーを行っている様子(写真:日経 xTECH)

8K手術用ビデオ顕微鏡システム「Micro eight」を利用し、ラットのマイクロサージャリーを行っている様子(写真:日経 xTECH)

日経クロステック

「高精細な8K手術用ビデオ顕微鏡システムを使うと、これまで縫えなかったものが縫えるようになる」(慶応義塾大学医学部臓器再生医学寄付講座特任教授の小林英司氏)――。医療用ガスや医療機器などの事業を手掛けるエア・ウォーター傘下のカイロス(東京・港)は、高精細な映像を映す8Kカメラを利用した手術用ビデオ顕微鏡システム「Micro eight(マイイクロエイト)」を開発し、2019年9月2日に販売を始めた。毛髪の10分の1に相当する数マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの縫合糸を認識でき、微小な血管やリンパ管をつなぐのに利用できる。

8K手術用ビデオ顕微鏡システム「Micro eight」(写真:日経 xTECH)

8K手術用ビデオ顕微鏡システム「Micro eight」(写真:日経 xTECH)

今回開発したシステムは、大型の70型モニターを利用しても、デジタルズームで実際の術野の300倍まで鮮明に拡大可能。人の目では見えない細かい作業を必要とする手術「マイクロサージャリー」(微小外科手術)に利用できる。臓器移植の際に微小な血管をつなげたり、切断された神経などをつなげたりする。

■がん関連の手術や再生医療に応用可能

他にもマイクロサージャリーは、がんの手術後のむくみを取る治療にも応用されている。転移したがんを除去する際にリンパ節を一緒に切断する場合、治療後にリンパの流れが滞ってむくみ(リンパ浮腫)が生じることが知られている。「これまで広く医療現場で利用されてきた2Kの手術用ビデオ顕微鏡システムでは、細かい血管などはぼやけてしまい手術が難しかった」と広島大学病院国際リンパ浮腫治療センターセンター長の光嶋勲氏は話す。そのため、限られた医師しか手術できないのが現状だ。「8K手術用ビデオ顕微鏡システムを使うと、より多くの医師が手術を行えるようになる」と光嶋氏は話す。

8K手術用ビデオ顕微鏡システムは手術以外にも、病理検査や再生医療の研究開発にも利用できると考えられている。特に再生医療で期待されているのは、100マイクロメートル程度の細い神経線維をつなぎ合わせることや、細胞や組織を移植した際に、それらと体内の細い毛細血管とをつなぎ合わせることだ。毛細血管とつなぎ合わせた方が、移植後に体内で接着しやすいと考えられている。「0.1ミリ(100マイクロメートル)のものをつなぐ時代は8Kじゃないと無理だろう。今までは想像できなかった手術が行える可能性がある」と光嶋氏は話す。

会見で説明する慶応義塾大学医学部臓器再生医学寄付講座特任教授の小林英司氏(写真:日経 xTECH)

会見で説明する慶応義塾大学医学部臓器再生医学寄付講座特任教授の小林英司氏(写真:日経 xTECH)

カイロスは、8Kカメラを利用した内視鏡システムを2017年に製品化している。同システムで利用した医療用カメラを、今回の手術用ビデオ顕微鏡システムに応用した。カイロスは、形成外科や脳神経外科、心臓外科などに対応する医療機関向けに販売していく予定だ。

エア・ウォーターグループ全体では、8Kの内視鏡や顕微鏡システムを活用した8K手術室を医療機関に提案したり、手術関連の器具や衛生材料、消耗品の開発に力を入れたりする方針としている。

(日経 xTECH/日経デジタルヘルス 高橋厚妃)

[日経 xTECH 2019年9月4日掲載]

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